大阪万博・中国館
テクノロジーが描くグリーン発展の未来社会

2025大阪・関西万博(以下、大阪万博)がこのほど開幕した。「人と自然の生命共同体を共に築く―グリーン発展の未来社会」をテーマとする中国館は、当万博の海外パビリオンの中でも最大級であり、緑の山河と自然を尊ぶ美しい中国の姿を示し、人と自然が調和・共生する未来社会を描き、世界の観光客を惹きつけている。

ハイテク感満載の中国館

ヘッドホンを装着すると、「神舟19号」の宇宙飛行士・蔡旭哲、宋令東、王浩澤が中国の宇宙ステーション「天宮」から送ったメッセージが聞こえ、レンズを通して、月探査機「嫦娥5号」と「嫦娥6号」が持ち帰った月の表側と裏側の土壌サンプルを間近で観察することができ、深海潜水体験カプセル「蛟竜号」に足を踏み入れれば、潜水士・唐嘉陵が7062メートルの深海で撮影した貴重な映像を見ることができる。

大阪万博・中国館では、最先端のテクノロジーの成果が、インタラクティブな設備やマルチメディアを通してダイナミックに紹介されている。

大阪万博・中国館の李慶霜政府総代表は、「中国館の『生生不息』エリアに展示されている嫦娥5号・6号が持ち帰った月の土壌サンプルは、月の表側と裏側の土壌サンプルを間近で対比できる史上初の展示です。来館者はレンズを通して月の土壌の独特の構造や微妙な違いを観察し、広大な宇宙を探索するという人類の大いなる夢が実現に近づく喜びを共有することができます」と語る。

「テクノロジー」と「未来」は当万博のテーマであり、中国館のセールスポイントでもある。大阪万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」のテーマのもと、158カ国地域、7つの国際機関が出展。各パビリオンが「いのち」や「循環」をキーワードに、展示やマルチメディアを駆使し、独自の文化や未来社会へのビジョンを表現している。

中国館の面積は約3500㎡で、海外パビリオンの中でも最大級である。展示は「天人合一」「緑水青山」「生生不息」の3つのエリアで構成されている。次世代の人型ロボットと交流したり、二十四節気をテーマにした大型マルチメディア映像や、世界最古の農業百科全書『耕織図』をデジタル画像で鑑賞でき、テクノロジーの力で、来場者を過去から未来へと誘う。

「悟空、こんにちは!」。館内では、絶えず来場者がスクリーンの中の「孫悟空」に呼びかけている。これは科大訊飛(iFLYTEK)が開発したAIビッグモデルによる「AI孫悟空」で、1960年代に上海美術映画製作所が制作したアニメ『大閙天宮(西遊記)』の孫悟空をイメージしている。

マルチリンガルで、ノイズ耐性の高い音声認識、感情を表現できる音声合成、マルチモーダルなインタラクションなどの最先端技術の融合によって、「孫悟空」と自由に交流できる。

科大訊飛の段大為副総裁によると、当プロジェクトは、中国製のコンピュートプラットフォームを用いて訓練された「訊飛星火」大型AIモデルで構築され、中国語、日本語、英語の3言語でAI孫悟空と自由に会話ができるという。

中国館の基調は「エコ」

4月28日から「四川ウィーク」が始まり、中国・四川省のジャイアントパンダ「蓉宝」とキンシコウがデジタル・アート大使として登場。「緑水青山」エリアでは、写真400枚から構成されたアート作品『国の至宝』『中華の妖精』が来場者を迎えた。音声や映像を駆使して、現代化する四川やパンダ「シャンシャン」の姿、環境保護やクリーンエネルギー産業などが紹介された。

中国館の基調は「エコ」。1階では、厦門・篔簹湖や湖南・十八洞村、タクラマカン砂漠の緑化事業を通じて、「緑こそ富」という中国のグリーン発展理念を発信している。

2階では、エネルギーやデジタル、水、生態、文化など8分野が融合したスマートシティのジオラマ模型を展示。AIで都市情報を統合・分析する未来型都市を紹介している。

ある日本人来場者は「脱炭素建築やスマートシティの取り組みに深く感銘を受けた」と語った。

中国館は設計段階から「エコ」を掲げ、竹材や軽量建材、ソーラーパネルを使用し、省エネ・低炭素を実現。建築と自然の調和も意識され、防音や断熱、美観にも優れている。

中国建築科学研究院の孫建超氏は「中国館は中国の技術力とスピード感、そして『グリーン発展』理念の実践を象徴する存在だ」と語った。

 

没入型の文化体験

「中国館の外観は竹簡を広げた形で、黄色い竹と詩文が刻まれた壁が印象的。館内では二十四節気をテーマにした映像が流れ、AI搭載の人型ロボットが来場者を案内する」──中国館の人気上昇に伴い、朝日新聞、読売テレビ、NHKなども中国文化や中日交流の発信に注目し、報道を行っている。

2階へ続く「青山明月」の長廊には、阿倍仲麻呂と李白の友情や、パンダの来日、トキ保護への中国の協力、孫悟空と鉄腕アトムの共演など、中日友好の物語が木彫で描かれている。

関西経済連合会会長・松本正義氏は「日本はかつて多くを中国から学び、今こそその歴史を振り返り理解を深める時」と語る。中国館は中国の姿と文化的魅力を伝える格好の場だ。

薛剣・駐大阪総領事は、「大阪万博は中国を理解する絶好の機会。中国館で5千年の文明と現代中国の全体像を体感してほしい」と述べた。

BIE(博覧会国際事務局)のケルケンツェス事務局長は、「未来の課題に立ち向かうには協力が不可欠。中国館はその精神を体現している」と評価した。