4月27日、森山裕自民党幹事長率いる超党派の日中友好議員連盟代表団が訪中する。本誌は、出発を控えた森山氏を東京・永田町の自民党本部に訪ね、単独インタビューを行った。日本のメディアから「影の総理」とも評される政界の重鎮は、取材当日も執務室のテレビで、社会、経済、世論の動向を見つめていた。(聞き手は本誌編集長 蒋豊)
逆境の中で、人の真価は問われる
―― 1月31日、日中友好議員連盟の新会長に就任されました。現在、日中関係はさらなる改善に向けた大事な時を迎えており、先生は重要な役割を担われました。日中関係の重要性と、新会長就任の抱負をお聞かせください。
森山 今年1月、二階俊博前会長の後任として、日中友好議員連盟の会長を引き継ぎました。長年にわたって日中交流に尽くしてこられた二階先生のご功績をしっかりと胸に刻み、全力で務めて参る決意です。私は「疾風に勁草を知る」という中国の言葉を大切に思っています。激しい風が吹くことで、強く丈夫な草が見分けられる――つまり、困難なときこそ人の真価が問われるということであろうと思います。この言葉を胸に、全力で会長の任に当たりたいと思っています。
日中両国はアジアの中核を担う国であり、アジア地域及び国際社会の平和と繁栄に対して極めて重要な責任を担っていると思います。私の政治の師であり、日中国交正常化に尽力され、日中友好の井戸を掘った一人である二階堂進先生から、田中角栄総理は1972年に訪中した際、周恩来総理と「小異を残して大同につく」という態度を堅持して、国交正常化を実現したと語っておられたとうかがいました。われわれには、そうした先人の思いを受け継いでいく責任があります。今後も粘り強く対話と交流を継続し、次の世代にしっかりとつないでいくことが大事だと思っています。
協調と合意によって安定を築く
―― トランプ大統領が最近、世界のほぼすべての国・地域を対象とする「相互関税」を導入する方針を打ち出したことで、世界経済の減速が懸念され、新たな貿易摩擦の引き金となることも考えられます。こうした状況下、中米両国と緊密な経済関係にある日本は、日中の経済関係の安定と発展をどのように図っていくべきでしょうか。
森山 私は『環太平洋パートナーシップ協定(TPP)』の交渉に携わってきました。TPPは当初、アメリカが主導した多国間の自由貿易協定でしたが、トランプ大統領の就任後、アメリカは離脱を決めました。その後、日本は他の参加国と粘り強く調整を続け、最終的に現在のTPPの枠組みをまとめあげました。その過程で、国同士が互いの立場を理解し合いながら、関税や商取引のルール等を決めてきました。こうした対話や協力が、地域経済の安定と世界の平和・繁栄につながっていくのだと考えています。
今回、関税措置による緊張が高まっていますが、互いの立場を十分に理解した上で、建設的な対話によって合意形成を図ることが大事だと考えています。そうすることで、徐々に解決策を見出すことができるのではないでしょうか。
安全保障には多国間協力が不可欠
―― 今年2月7日に行われた日米首脳会談および共同声明では、「日米同盟は東アジアの平和と安全の基礎である」ことが再確認されました。こうした中、日米関係を軸としながら、中国や韓国も含めた東アジアの安全保障体制には、今後どのような変化が生まれるとお考えですか。
森山 たしかに、日本と韓国の間には乗り越えるべき課題がいくつかありますが、対中関係については、昨年から交流の機運が再び高まりつつあり、東アジア全体の関係性を考えるうえで、重要な動きだと思います。日本は同盟国であるアメリカと、経済や安全保障の分野でこれまでも緊密に連携してきました。ただ、東アジアの国々は、それぞれ地理的背景や歴史、政治体制などが異なります。そのため、こうした多国間の関係を進めるうえでは、互いの立場を理解し合い、敬意をもって接する姿勢が大切だと感じています。対話と協調によってのみ、多国間協力の枠組みは築かれ、その先に、東アジアの平和と安定があると信じています。日中韓をはじめ、すべての国がその目標に向けて力を合わせていく必要があります。
日中韓首脳会談の早期実現に期待
―― 今年1月に行われた日中与党交流協議会では、中国の李強国務院総理と会談し、石破茂首相から中国の最高指導者宛ての親書を託されたと伺いました。李総理からは石破首相の訪中を歓迎する旨の発言もあったとのことですが、今後の首脳間の相互訪問について、どのような期待をお持ちでしょうか。
森山 本来であれば、今年初めに日中韓三カ国の首脳会談が実現することを大いに期待していたのですが、残念ながら韓国の国内政治が不安定な状況となり、準備作業が遅れてしまいました。この点は非常に残念です。私は常々、中国の国家指導者を早期に日本にお迎えし、日本で日中韓首脳会談を開催することが極めて重要だと考えてきました。そして、石破首相ご自身も、できるだけ早い時期に中国を訪問したいという強い思いを抱いておられます。日中の首脳同士が直接会って率直に語り合う機会をつくるため、日本としても、引き続き準備を進めていきたいと考えています。
国会代表団の訪中が新たな対話の扉を開く
―― 今回の訪中に期待することは何でしょうか。
森山 今回の訪中は、これまでの与党間交流とは異なり、国会代表団としての訪中となり、日本の立法府を代表しての対話が行われるという点に大きな意義があります。与党議員だけでなく、野党議員も参加します。こうした超党派の取り組みは、日本の政界において、日中関係の発展が幅広く共通認識となっていることの表れでもあり、両国の相互理解と信頼の深化にもつながると考えています。
国際情勢が複雑化する中で、今回の訪中は、日中関係に新たなエネルギーをもたらすものになると確信しています。
取材後記
自民党本部を後にすると、東京の街は桜が満開だった。森山裕幹事長への取材を振り返りながら思った。――「影の総理」とも呼ばれるこの政治家が踏み出そうとしているのは、対話によって課題を解決し、合意形成によって基盤を固める旅である。真摯な対話によって、両国は困難を乗り越え、春和景明の新たな局面が開けるに違いない。
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