斉藤鉄夫 公明党代表・衆議院議員
信頼と交流で深める日中の絆

2025年1月、6年3カ月ぶりに「中日与党交流協議会」が再開された。政府間の対話とは異なり、与党同士の率直な意見交換ができるこの枠組みは、両国関係の安定において重要な役割を果たしてきた。先ごろ、公明党代表の斉藤鉄夫衆議院議員にインタビューを行った。斉藤氏は中日関係の改善が求められる中、与党間の率直な対話が相互理解の深化につながると強調。さらに、日本産水産物の輸入再開やアジア版OSCEの提唱など、経済・安全保障の課題にも積極的に取り組む姿勢を示した。そして、長年にわたり中日友好を推進してきた公明党の役割と今後の展望について語った。

日中与党交流協議会[2025年1月14日 北京市]*公明党提供

6年3カ月ぶりの再開
相互理解の前進へ

―― 本年1月、与党訪中団が中国を訪問し、李強総理らと会見するなど、「中日与党交流協議会」が再開されました。この意義をどのように受け止めていますか。

斉藤 「日中与党交流協議会」には、これまで私も3回参加しました。政調会長や幹事長を務めていた時期に訪中し、4回目も予定していたのですが、直前で中止となり、それ以来ずっと中断していました。今回、6年3カ月ぶりに再開されたことを大変喜ばしく思います。

この協議会は2006年に始まりました。政府間の立場ではなく、与党同士が率直に意見を交わすことで、相互理解を深め、政府間関係を支える役割を果たしてきました。初回の訪中では、当時自民党の政調会長だった谷垣禎一氏とともに、習近平副主席(当時)にもお会いしました。

現在、日中関係は一昨年のサンフランシスコでの首脳会談を契機に改善の兆しが見えていますが、民間の調査では両国の国民感情は依然として芳しくありません。政治は国民感情を無視できず、その改善が急務です。今回の協議会や要人会見でも、この点が大きなテーマになりました。与党間の意見交換が進んだことは、大きな前進と言えるでしょう。今後、王毅外交部長の訪日や首脳間の往来につながることを期待しています。

趙世通中連部長助理(中央右)らの表敬を受ける斉藤代表(左隣)ら[2024年11月26日 公明会館]*公明党提供

 

日中経済の安定へ、
交流環境の整備を

―― 昨年9月、日中両国はIAEA(国際原子力機関)の枠組みで追加モニタリング調査を実施し、日本産水産物の輸入を段階的に再開することで合意しました。公明党として、日中経済関係の安定と発展にどのように貢献していきますか。

斉藤 中国による日本産水産物の輸入再開に向けた動きを、大いに歓迎しています。今回の与党訪中では、米や牛肉の輸入再開についても、自民党の森山幹事長と公明党の西田幹事長が強く要請しました。

また、西田幹事長は、中国での日本人の滞在に関する案件についても言及しました。この状況が、日本のビジネスマンや学者が中国訪問をためらう要因となり、経済関係の障壁になっているとの指摘を行いました。さらに、中国の法律に抵触する行為が何か、明確なガイドラインを示すよう求めました。中国側も、この懸案を重視しているとの認識を示しました。

現在、中国に住む日本人は約10万人で、年々減少していますが、それでもアメリカ、オーストラリアに次いで3番目に多い国です。一方、日本に住む中国人は約85万人で、在留外国人の中で最も多い。両国民が過ごしやすい環境を整えることが、相互往来の活発化につながり、経済発展の鍵となります。観光振興も含め、関係強化に努めていきます。

 

中国の呉江浩駐日大使(右から2人目)の表敬を受ける斉藤代表(左隣)ら〔2024年11月28日 公明会館〕 *公明党提供

対話による
安全保障協力の構築へ

―― 国連加盟国は昨年の未来サミットで「多国間主義の新たな開始」を誓約しましたが、実際には自国中心主義や二国間交渉が優先され、国際平和に影を落としています。アジアの安全保障環境が厳しさを増す中、公明党はどのように取り組みますか。

斉藤 最近、日本の平和学者の方々が公明党本部を訪れ、私や前代表の山口那津男氏と懇談しました。その際、「世界中の武器が集中する地域は3カ所ある」との指摘を受けました。それはヨーロッパ、中東、そして東アジアです。我々は、そのような環境にいるという認識を持たねばなりません。

朝鮮半島の緊張、中国の軍事力拡大など、東アジアの安全保障環境は変化しています。こうした状況において重要なのは、国同士の対話です。今回の訪中では、西田幹事長が「アジア版OSCE(欧州安全保障協力機構)」の創設を提唱しました。これは、大使級の代表が定期的に会合を開き、情報交換を行う常設の多国間安全保障対話の枠組みです。

ヨーロッパのOSCEには、アメリカもロシアも加盟し、大使級の代表が定期的に情報交換を行っています。その結果、いざという時に相手の真意を正確に把握し、紛争の拡大を防ぐ役割を果たしています。中国側も、この構想に前向きな姿勢を示しました。今後、中国、韓国、アメリカなどアジア太平洋地域の国々の理解を得て、実現に向けて取り組んでいきます。

民間交流の活性化で
相互理解を深化

―― 1月28日、東京タワーでの「レッドライトアップ」点灯式に出席し、「日中関係も新しく生まれ変わり、将来に向けて力強く発展していきたい」と語られました。公明党は一貫して中日友好を訴えてきましたが、中日関係の重要性についてどのようにお考えですか。

斉藤 春節の前日、東京タワーのレッドライトアップに参加しました。公明党は山口代表の時代から毎年このイベントに参加しています。点灯の瞬間を楽しみにしていたのですが、式典会場が東京タワーの真下だったため、ライトアップの変化を目にすることができず、少し残念でした(笑)。しかし、中国の芸能人によるショーなどもあり、大変楽しい時間を過ごしました。

日中関係の重要性については、今国会の施政方針演説に対する代表質問で、公明党が唯一、衆参両院で日中関係に関する質問を行いました。これは、公明党が日中関係を重視している証左です。

「国の交わりは民の相親しむに在り」という言葉があるように、日中関係は国民同士の交流に支えられてきました。民間交流の活性化は、国民感情の改善につながり、首脳往来の基盤となります。文化・スポーツ交流や青少年交流、特に修学旅行の促進など、さまざまな交流事業を推進し、日中関係の発展に貢献していきます。公明党は結党以来60年間、その先頭に立って取り組んできたと自負しています。

取材後記

取材終了後、恒例の揮毫をお願いすると、斉藤代表は迷うことなく筆を取り、「誠」の一字を書き上げた。「誠意を尽くし、日中関係の永続的な交流と平和の構築に努めるという決意を込めました」と語るその表情は、自らの信念を体現するかのように穏やかで、力強さを感じさせた。

対話を通じて相互理解を深め、困難を乗り越えながら関係を築いていく――まさに「誠」の一字に込められた思いそのものだ。中日関係は時に難しい局面を迎えることもあるが、こうした誠意ある対話の積み重ねが、やがて確かな信頼へとつながっていくのだろう。