「あなたの家のゴミ袋はどんな形をしていますか?」――。
そう聞かれると、多くの人は「ゴミ袋なんて、どれも同じでは?」と思うかもしれない。しかし、中国のある製造企業は、一見地味なゴミ袋に独自の工夫を加え、新たな価値を生み出している。
義烏欧凱斯日用品有限公司の呉祥炬董事長は、「私は『中国で最も競争が激しいECの街』義烏(ぎう)出身で、最も競争の厳しい日用品業界に身を置き、その中でも特に激戦区のゴミ袋市場に挑んでいます」と語る。
あるECプラットフォームによると、現在販売されているゴミ袋の種類は1000万~2500万点に及び、競争する業者は数十万社。まさに過酷な市場だ。
一般の消費者も、その熾烈さを実感しているだろう。以前、ECサイトで「ゴミ袋」と検索すると、似たような商品がずらりと並び、価格も大差ない。結局、より安いものを選ぶか、レビューやリピート率を頼りに購入するしかなかった。
「ゴミ袋なんてどれも同じ」「数百円のものだから、失敗しても大したことはない」と考える人が大半だったのだ。
この状況下で、メーカーは生き残るために必死だった。「本当に厳しい市場です。私たちは何度も試練に直面しました」。
呉氏によると、ある年の売上高は7000万元(約14億6300万円)に達したものの、最終的な純利益はわずか26万元(約542万円)。さらに、在庫が2000万元(約4億1800万円)も増え、実質的には赤字だったという。
「生き残るためには、変革するしかない。そこで、私たちは『イノベーション』に挑戦しました」と呉氏は語る。
ゴミ袋に革新の余地はあるのか。その答えは「ユーザー体験」にあった。
日常的に使うゴミ袋には、どんな不便があるのか。
「当時、国内のゴミ袋はすべて“点線カット式”で、両手で引き裂く必要があり、破れやすかった。そこで、ティッシュのようにスムーズに引き出せる“切り取り不要”のゴミ袋を開発しました」と呉氏は話す。現在では、この「切り取り不要」がECサイトでも人気の売り文句になっている。
さらに、ゴミ袋にはもう一つの共通点がある。それは「見た目が地味」なことだ。
従来のゴミ袋は、黒・白・グレー・赤・緑・紫など、色の違い程度しかなかった。しかし現在では、かわいいウサギのイラスト入りや、花柄デザイン、十二支をモチーフにしたものまで登場し、ゴミ袋にも「感情価値(エモーショナル・バリュー)」が加わるようになった。
デザインの工夫は、消費者に選ぶ楽しさを提供し、メーカーにとっても新たな売上の柱となった。「例えば、2024年に発売したウサギ柄のゴミ袋は、年間5000万元(約10億4500万円)を売り上げる大ヒット商品になりました」と呉氏は語る。
発想の転換によって、さらなるイノベーションが生まれている。例えば、ゴミ袋に「ヨモギ」の香りをつけて蚊よけ効果を持たせたり、中秋節向けに「キンモクセイ」の香りを加えた商品を開発したりと、機能性と楽しさを兼ね備えた製品が増えている。さらに、ツバキやクチナシの香りを採用したものも登場し、ゴミ袋が単なる消耗品から、生活を彩るアイテムへと進化している。
こうしたイノベーションを武器に、同社は海外市場への進出も本格化させている。「2024年後半からアメリカ市場に挑戦しました」。呉氏によると、調査の結果、アメリカ市場の上位100位までのゴミ袋は、どれも無地だった。しかし、同社は市場のニーズを分析し、デザイン性のあるプリントゴミ袋を投入。すると、大きな反響を呼んだという。「今年はさらに越境ECを活用し、多くの国へ展開する予定です。2025年の海外売上は、2020年の年間売上を超える見込みです」と語る。
激戦区の市場でも、成長の余地はあるのか。単なる価格競争に陥るのではなく、どう差別化を図るべきか。その答えを「ゴミ袋」の成功事例が示している。革新の成果は、業績にも反映されている。呉氏によると、2023年初めに会社が改革を進めた結果、その年の売上は前年比20%増。2024年は3倍の成長を遂げ、2025年もさらに3倍の成長を目指しているという。
こうした変化の背景には、消費者の価値観の変化がある。現在、多くの人が「質と価格のバランス」を重視し、安さだけでなく、品質やデザイン、利便性にもこだわるようになっている。こうしたニーズの高まりが、新興ブランドやユニークな製品の登場を後押ししている。
2月10日、アリババグループのB2Bプラットフォーム「1688」は、「産業拠点の力強い回復」キャンペーンを開始。デジタル化やAI技術、越境EC市場への参入を進める工場を支援する施策を発表した。
今、多くの製造企業が変革を遂げる中、「ゴミ袋」のような成功事例がこれからも続々と生まれていくだろう。
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