自動車メーカーはなぜロボットを作るのか

小米などが異業種から自動車製造に参入する一方で、多くの自動車メーカーが人型ロボット分野への進出を進めている。現在、広汽(GAC)、小鵬(Xpeng)、奇瑞(Chery)などが、この分野に投資したり独自の研究開発を行ったりしている。

自動車メーカーにとって、ロボット製造と自動車製造には多くの技術的な共通点がある。さらに、自社製の人型ロボットを自動車生産ラインで活用することで、効率や品質の向上が期待されている。この分野は将来的にも大きな成長の可能性を秘めていると考えられている。

自動車メーカーの

人型ロボットが稼働中

2024年12月26日に開催されたイベントで、広州汽車集団(広汽)が発表した第3世代スマート人型ロボット「GoMate」が注目を集めた。このロボットは、車輪と脚を組み合わせた移動構造を採用しており、用途に応じて「4輪モード」と「2輪モード」を切り替えることができる。

・4輪モード:4つの車輪を使って安定した移動を行い、階段の昇降や斜面の移動、片側の障害物越えが可能。

・2輪モード:2つの車輪で機敏な動きを実現し、狭い空間でもスムーズに移動できる。

また、エネルギー消費は同種製品と比べて80%以上削減され、連続稼働時間は6時間を実現している。このロボットは、2025年に自社製部品を使った量産化が予定されている。

小鵬汽車は、新世代の人型ロボット「Iron艾倫」を発表した。このロボットは身長1.78メートル、体重70キログラムで、62のアクティブな関節を備えており、柔軟で自然な動作が可能である。

一方、奇瑞汽車はAI企業と共同で「Mornine」という人型ロボットを開発。人間の言葉を正確に理解し、それを具体的な行動や会話に変換する能力を持つ点が特徴である。

広汽の「GoMate」は、他社に先駆けて広汽伝祺ブランドや広汽埃安ブランドなどメインエンジン工場の生産ラインに導入され、2026年には小規模生産を予定している。

また、小鵬のロボットはすでに工場で組み立て作業を担っている。奇瑞の「Mornine」は店舗販売員として設計され、大規模言語モデルを活用しながら、顧客の質問に対応し、製品情報を詳細に提供できるよう調整されている。

 

自動車メーカーが

ロボットに注力する理由

自動車製造と人型ロボットの製造には、多くの技術的な共通点がある。特に、自動運転や環境認識、人とのインタラクション、運動制御技術は、ロボット開発においても基盤となる技術として活用されている。

また、自動車メーカーはロボット市場の将来性にも注目している。ロボットには以下のような多くの利点がある。

・生産効率と品質の向上

・生産コストの削減

・スマート製造能力と競争力の強化

さらに、商業サービスや家庭での介護、医療支援など、幅広い分野での活用が期待されている。産業の融合が進む中、自動車メーカーは新たなビジネス分野を切り開き、さらなる商業的価値を生み出すチャンスをつかんでいる。

 

ロボット市場の可能性

2024年の世界人工知能(AI)大会で発表された報告によると、2029年までに中国の人型ロボット市場規模は750億元(1兆5000億円)、2035年には3000億元(約6兆円)に達すると予測されている。こうした市場の潜在力に加え、人工知能やセンサー技術、運動制御技術の進化により、人型ロボットはますます多くの分野で活用されている。

ロボットがサッカーをしている様子

未来の展望

「人工知能+」行動の提案や政策支援を受け、ロボット産業は新たな局面を迎えている。2025年までに、イノベーション体制の構築や製品の国際競争力向上が目標とされている。

現在、中国では人型ロボットの全産業チェーンを網羅する供給体制が整備されつつあり、市場の大きな需要を背景に、技術の進化と応用の拡大が進められている。一方で、コスト削減や技術革新、リスク管理といった課題への対応も必要とされている。

奇瑞が開発した「Mornine」は、将来的に家庭での介護や子どもの世話、家事など、多彩な場面で活用される構想が描かれている。政策の後押し、業界の参入、そしてAI技術の進化が相まって、人型ロボット産業は新たな展開を迎え、活用の幅がさらに広がることが期待されている。