2025年1月1日、マレーシア六堡茶協会と河南省茶葉商会の招きにより、筆者は鄭州国香茶城で開催された「2025新年茶会・六堡饕餮」に参加した。主催者は参加者を5種類の陳年六堡茶でもてなしてくれた。最も若いものでも20年以上熟成されたもので、残る4種はさらに希少で、それぞれ1990年代、80年代、70年代、60年代の陳年六堡茶であった。まさに「六堡饕餮」の名にふさわしい、贅沢な品揃えであった。
「そんなに古いお茶、もう賞味期限が切れているのでは? 本当に飲めるのか?」と疑問に思う読者もいるかもしれない。「茶は新しいものが貴ばれ、酒は古いものが貴ばれる」と言われるが、ここでいう「茶」は緑茶を指している。
中国は茶葉の種類が豊富で、緑茶、白茶、黄茶、青茶、紅茶、黒茶の6つの分類がある。広西の六堡茶は黒茶に属し、古いものほど尊ばれる。年代物は稀少で、当然ながら高額になる。
「古いお茶を飲むのは、最近の流行りだ」と言う人がいるかもしれないが、決してそうではない。筆者が所蔵する『広西特産風味指南』(広西人民出版社、1985年出版)の「六堡茶」の項目には、次のような記載がある。
「六堡茶にはもう一つの特徴がある――長期保存に適しており、古いものほど良い。特に、茶葉に金花カビ(人体に有益な金色のカビ)が発生したものが最も喜ばれる。この金花カビはさまざまな酵素を分泌し、茶葉の成分を変化させて芳醇な香りを生み出す。清涼感があり暑さを和らげるだけでなく、胃を温め、気持ちをリフレッシュさせる効果もあり、胃腸の弱い人に適している」。
ここからもわかるように、陳年六堡茶は早くから尊ばれていた。文中に登場する金花は、学名を冠突散囊菌といい、乳酸菌と同じ善玉菌の一種である。金花カビが発生した六堡茶は上等品とされる。今回の新年茶会で最初に振舞われた2000年ものの六堡茶は、まさに典型的な金花六堡茶であった。茶芸師が茶葉12グラムを200mlの坭興陶(にしんとう、中国四大名陶のひとつ、広西の伝統陶器で六堡茶との相性が良い)で淹れると、茶湯から芳醇な菌花香が立ち上り、一口含むと忘れがたい風味が広がった。ただし、すべての陳年六堡茶に金花カビが発生するわけではない。金花が現れない六堡茶にも、独特の風味がある。
例えば、茶会で二番目に振舞われたお茶は、マレーシア六堡茶協会の郭俊邦会長が所蔵する1990年代の六堡茶であったが、このお茶には金花が発生しておらず、当然ながら菌花香もない。しかし、茶湯を口に含むと、陳香(熟成した香り)がはっきりと感じられ、後味にどこか懐かしい香りが広がった。それは幼少期に北京廠甸廟会で飲んだ杏仁茶の香りとまったく同じであった。陳年六堡茶から杏仁のような香りが立つのは非常に珍しく、興味深い発見であった。
さらに熟成させると、味わいはより豊かになる。新年茶会で最後に振舞われたのは、1960年代の「上元度港系六堡茶」であった。60年近く熟成させた六堡茶は、人参のような香り、木の香り、薬草の香りといった複雑な風味があり、六堡茶の特徴であるビンロウ香が、全体を通してしっかりと感じられた。
ここで強調しておきたいのは、陳年六堡茶は単に年代が古いだけでは不十分であり、保管環境がより重要だということである。保管状態が悪く、湿気でカビが発生してしまえば、どれほど古い六堡茶であっても価値はなくなる。今回の新年茶会で提供された陳年六堡茶の中には、半世紀近く熟成を重ねたものもあったが、どれも臭みが一切なく、陳香のみが際立ち、素晴らしいものであった。
六堡茶の歴史を知るには、文献よりも現存する陳年六堡茶の実物を見た方が確実である。今回、鄭州で開催された茶会では、茶席の周囲に陳年六堡茶の実物が展示されていたが、いずれも六堡茶の銘品ばかりであった。中でも最も注目を集めたのは、1952年の六堡茶の磚茶(タンチャ:茶葉を固めた物)サンプルであった。これは、六堡茶が東南アジアへ輸出されていたことを証明する貴重な歴史的資料であり、その価値は金銭では測れない。
展示品の中には、1970年代に発売された「黄盒六堡茶」や、同じく70年代の「八中紫盒六堡茶」「八中紅盒六堡茶」「山水盒六堡茶」、90年代の「山水盒六堡茶」(貿易会社「西江ブランド」)、同じく90年代の「山水盒六堡茶」(貿易会社「多特利ブランド」)、80~90年代の「黑盒無土六堡茶」等、古びた外箱が六堡茶の歴史を物語っていた。
1980~90年代の黒盒無土六堡茶の外箱には、「六堡茶」ではなく「六保茶」と記されている。これは誤記ではなく、当時の関係者の発想によるものだ。80年代、日本は好景気に沸き、人びとの食生活も豊かになり、高血圧や高脂血症、糖尿病といった生活習慣病を患う人が増えていた。そんな中、東京農業大学教授で農学博士の小泉武夫氏が、広西の六堡茶に注目したのである。小泉教授は著書『発酵食品礼讃』の中で、「貴重な微生物発酵茶」の章を設け、そこで取り上げたのが、雲南のプーアル茶と広西の六堡茶であった。小泉教授によると、茶葉の発酵過程で発生する糸状菌類が酵素を生成し、この酵素には体内の脂肪を分解し、老廃物を排出する働きがあり、発酵が終わった後も熟成期間が長ければ長いほど、茶葉の健康効果は高まるという。そして、日本では、六堡茶とプーアル茶がダイエット茶として高齢者やホワイトカラー層に支持されるようになった。
ところが、六堡茶の日本輸出に際して、一つの問題が浮上した。日本では「堡」の字はほとんど使用されておらず、日本人には馴染みがなかった。そこで、1.日本人に読みやすい。2.「保」には「保護」や「保健」といった意味があり、体に良いお茶であることを直感的に伝えやすい。3.中国語で「保」と「堡」は発音が同じである、という理由から、表記を「六保茶」に変更した。そして、広西の六堡茶は日本でも人気を博した。現在、六堡茶のコレクターの間では、当時日本向けに販売された六堡茶は「無土六堡」と呼ばれている。1980年代、六堡茶は日本で広く愛飲されていた。しかし、中国国内では、未だに六堡茶を飲んだことがない人も多い。これは実に残念なことである。機会があれば、ぜひとも上質な陳年六堡茶を味わっていただきたい。
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