日中新時代(10)
日中両国、関係改善へ急速に動く 相互往来が活発化 習近平国家主席の国賓来日も探る

日中両国政府は日中関係の安定を2025年の外交課題に据えている。ハイレベルの往来で実績を積み重ね、関係改善の象徴として延期したままの習近平国家主席の来日時機を探る。

日本政府や与党幹部の中国訪問が相次いでいる。森山裕自民党幹事長、西田実仁公明党幹事長らは1月13~15日に中国を訪れ、日中与党交流協議会を約6年ぶりに開催した。中国の李強首相をはじめ中国共産党で序列4位の王滬寧全国政治協商会議主席、王毅党政治局員兼外相と会談した。李強氏に早期の訪日を要請したのに対し同氏は「よい時期に枠組みの中で計画が進む。そのときにしっかり対応したい」と答えた。

石破茂首相は早期の訪中に意欲を示しており、森山氏は習近平国家主席に宛てた石破氏の親書を手渡し、李強首相は石破首相の訪中を歓迎した。

江藤拓農相は1月17日、訪問先の北京で韓俊農業農村相と会談した。韓氏は日本が求めている日本産牛肉の輸入再開に理解を示し、再開の前提となる動物衛生・検疫の協定の早期発効へ調整を急ぐと確約した。

自衛隊と人民解放軍が7年ぶり交流

一方、中国人民解放軍の代表団6人が1月13~17日の日程で来日した。中国軍が来日したのは2018年11月以来約7年ぶり。防衛省の大和太郎防衛政策局長や統合幕僚監部の川村伸一運用部長と懇談したほか、自衛隊中央病院(東京・世田谷)や海上自衛隊の舞鶴基地(京都府)を訪れた。中谷元・防衛相は「日中間における建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていく意義があった」と語り、自衛隊部隊の訪中についても検討する方針だ。

日中両政府が模索するのは新型コロナウイルスの感染拡大を理由に見送られたままの習近平氏の国賓来日だ。日中関係は最近急速に改善しているものの、日本政府は軌道に乗せるためには習氏の来日が欠かせないとみる。習氏が13年に国家主席に就いてから日本を訪れたのは19年の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)のときだけで、単独訪問は一度もない。外務省幹部は「ハードルは多いが、習氏と率直に話せる環境をつくる必要がある」と語る。

1月に発足したトランプ第二次政権のアジア政策が不透明な状況下、東アジアで衝突を避けるために日本政府は対中関係を安定させる戦略を推進する。

石破茂首相はかねてより訪中に意欲を示しており、24年末のテレビ番組で「中国に行くのは極めて大事だ」と述べた。

トランプ氏と習氏は1月17日に電話協議し、互いに有益だったとアピールした。トランプ氏は「われわれは多くの問題を共に解決し、すぐにでも始めることができると期待している」と語った。この直後に米紙はトランプ氏が「100日以内の訪中に関心を示している」という側近の話を伝えた。

トランプ第二次新政権のアジア政策が不透明な状況の中、日本政府は対中関係を安定させる戦略を模索し中国政府もこれに呼応する。日米中3カ国がアジア地域で行き来し、共存共栄の道を探るのは極めて重要だ。日中の連携はアジアの平和と発展の基盤である。

<評者プロフィール>

1971年時事通信社入社。ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。Record China社長・主筆を経て現在同社相談役・主筆、人民日報海外版日本月刊顧問。日中経済文化促進会会長。東京都日中友好協会特任顧問。著著に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」など。