アート・バーゼル(Art Basel)を巡ると、一年が終わる。3月末の「アート・バーゼル・香港」でアジアを統括し、6月中旬にスイス本部(バーゼル)での「アート・バーゼル」を開催してヨーロッパを統括し、12月初旬には「アート・バーゼル・マイアミ」で北米を統括してきた。コロナ禍を経て、フランス最大級のアートフェア「FIAC」がアート・バーゼルに買収され、ヨーロッパでは「アート・バーゼル・パリ」が新たに加わった。
3月の香港、6月のスイス、10月のパリ、12月のマイアミと、春、夏、秋、冬のリズムも悪くない。
かつては、6月のスイス本部でアート・バーゼルが開催される前に「ヴェネチア・ビエンナーレ」が開幕し、世界中から集まったアート関係者がヴェネチアのオープニングを終えた後、そのままアート・バーゼルに移動する流れがあった。ヴェネチア・ビエンナーレで展示された作家の作品を、アート・バーゼルでコレクションできるという連携プレイができていた。
奇数年に開催されていたヴェネチア・ビエンナーレはコロナ禍を経ていつの間にか偶数年に移行し、建築とアートのビエンナーレは奇数年と偶数年で入れ替わった。その結果、ヴェネチア・ビエンナーレはアート・バーゼルと関係なく別の時期に開催されるようになり、ヴェネチアを訪れた後にバーゼルへ向かう流れはなくなった。そして、2024年のヴェネチア・ビエンナーレは「ミラノ・サローネ」と時期が前後する形となり、デザインフェアのイベントに訪れたついでに、その後ヴェネチア・ビエンナーレに足を運ぶという流れが定着しつつある。
世界には数多くののアートフェアが存在する。アート・バーゼル以外にもフリーズ・アートフェア(ロンドン発)、アーモリー・アートフェア(ニューヨーク発)、テファフ・アートフェア(アムステルダム発)など国際的にフォーカスされている重要なアートフェアだ。その中で、フリーズ・アートフェアとオランダの老舗アートフェア「テファフ=TEFAF、欧州美術財団)はニューヨークでも開催されている。フランス・パリでは、かつてFIAC(国際現代アート見本市)が重要なアートフェアだったが、コロナ禍の後、バーゼルに買収され、冒頭で述べた「アート・バーゼル・パリ」へと生まれ変わった。その結果、10月にフリーズ・アートフェア・ロンドンを訪れたアート関係者は、その後パリに移動するという流れが定着しつつあり、リニューアルを終えたばかりのグラン・パレで開催されたアート・バーゼル・パリは大きな話題を呼んだ。グラン・パレの美しい会場も成功を後押しする要因の一つだったかもしれないが、会場は大いに盛り上がったらしい。私は昨年、3月の香港と12月のマイアミには行けたが、残念ながら6月のバーゼルと10月のパリには日程の都合で行けなかった。今年は4カ所とも行きたいと思う。アフター・コロナの今だからこそ。
フリーズ・アートフェアは2年前に韓国・ソウルに進出した。コエックスのコンベンション・センターでKIAF(韓国国際アートフェア)と同じ会場で、1階の全館に加え、2階までスペースを拡大し開催された。特に昨年は光州ビエンナーレと釜山ビエンナーレも同時期に開催されたことで、大きな話題を呼び、昨年のアジアのアートフェアでは最も盛り上がったとも言える。11月の上海では、021アートフェアとWest Bundアートフェアが同時期に開催され、アート関係者が一斉に集まる。ただ、コロナ前に比べると国際色が少し薄れた感が強い。
東京では、アートフェア東京が3月に有楽町の国際フォーラムで開催されているが、現代アートだけではなく、骨董や日本画等も同時に出品されているのと、出店ブースがほとんど国内ギャラリーであるため、規模が小さくブースも小さい。一方、2年前に新たに誕生した「東京現代」は、横浜のパシフィコ横浜に立地し、現代アート専門のアートフェアになった。保税倉庫が備わり、海外ギャラリーの出展比率がある程度確保されるようになったものの、開催時期がバカンスシーズンと重なる7月初めだったため、富裕層が不在になりがちだった。今年は9月開催に変更されたらしいだが、ソウルのアートフェアの後にコレクターたちが横浜まで足を運ぶかどうかだ。
東京では、11月に上海の二つのアートフェアと同時期にアートウィーク東京が開催されている。約50カ所の現代アートギャラリーが参加し、アート・バーゼルが共同主催して、バーゼルのVIPを東京に招くという企画だ。
新興市場の中で興味深いアートフェアとしては、ドバイ・アートフェア、メキシコ・アートウィーク、年明け早々に開催されるシンガポールのアートフェア、台湾の「台北当代」など、いずれも現代アートのフェアだ。
世界中のアートフェアをすべて巡るのは現実的ではない。アート市場が活発な地域では、大体どこでも3、4カ所のアートフェアが開催されている。日本だと、東京以外にもアートフェア大阪、福岡のAFAF、京都のアートフェアなどがあり、大阪関西万博がある今年は大阪でその関連イベントも開催される予定だ。
中国は上海以外にも、北京、深圳でもアートフェアが開かれ、さらに増え続けている。
問題は、次々と開催されるアートフェアが持続可能か、そしてコレクターたちが今後もアートフェアに足を運び、作品を購入し続けるのかという点だ。年末年始には米国でのトランプ大統領就任式前に、TIKTOKのアメリカ国内での使用禁止が発表され、「TIKTOK難民」となった外国人ユーザーが「レッド・ノート(中国語:小紅書)」に大量に流入する事態が発生した。これにより、中国国内向けのSNSが瞬く間に英語やフランス語に対応し、国際バージョンへと変貌を遂げた。さらに、旧正月前には「Deep Seak」の無料ダウンロードが発表され、世界を驚かせた。アメリカの同業他社の株価急落を招いた中国の若手技術系企業によるアプリの登場だ。A Iの進化により、どんな未来がくるか、その未来にアートはどんな変化をもたらすのか? 今後が楽しみだ。
洪欣
東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。ダブルスクールで文化服装学院デザイン課程の修士号取得。その後パリに留学した経験を持つ。デザイナー兼現代美術家、画廊経営者、作家としてマルチに活躍。アジアを世界に発信する文化人。
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