2025年の円安トレンドの継続とその背景

近年、円安の進行は世界的な注目を集めている。本稿では、金融政策、貿易条件、経済成長、世界的な安全資産需要の観点から、2025年の円安の主な原因を解説し、今後の動向を考察する。

2025年円安の主な原因

(1)金融政策の差による影響

2024年に世界の主要国が利上げを一段落させたものの、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)の金利は依然として日本を大きく上回っている。この金利差が円安をさらに進める要因である。

(2)貿易収支の悪化

日本は輸出依存型の経済であるが、近年のエネルギー価格高騰により輸入コストが増加し、貿易赤字が拡大している。その結果、経常収支の黒字が大きく縮小し、円安を支える要素が弱まっている。

(3)経済成長の低迷

日本経済の成長鈍化により、国際市場における円の魅力はさらに低下している。

(4)リスク回避需要の低下

世界経済が安定しつつある中で、投資家は安全資産としての円よりも、高利回りのドルなどを選ぶ傾向が強まっている。

 

円安の日本経済への影響

(1)輸出への恩恵は限定的

円安は通常、輸出産業にとって追い風となる。しかし、2025年は世界的な需要の減少やサプライチェーン問題の影響で、輸出の伸びは限定的と予測される。一方で、輸入コストの増加が輸出の利益を相殺する可能性がある。

(2)家計への負担増

円安により輸入品価格が上昇し、物価が高騰することで家計への負担が増大している。これにより可処分所得が圧迫され、消費の減少が懸念される。

(3)金融市場へのリスク

円安が資本流出を引き起こし、日本の政府債務比率が高まる中で、経済全体の不安定性が増す恐れがある。

 

2025年の円相場の見通し

2025年も円安傾向が続く可能性が高い。最悪の場合、1ドル=165円を超える水準にまで下落する可能性がある。

 

データで見る円安の背景

(1)金利差

日本はマイナス金利(-0.1%)を維持する一方で、FRBの金利は5.25%、ECBは4%以上に達している。国際金融協会(IIF)によれば、2024年には日本からの資本流出が700億ドル(約11兆528億円)を超えている。

(2)貿易収支

2024年、日本の貿易赤字は680億ドル(約10兆7637億円)に達し、経常収支の黒字は過去10年で最低水準となった。エネルギー価格が高止まりしていることが背景にある。

(3)経済成長

国際通貨基金(IMF)は2025年の日本のGDP成長率を1.1%と予測しており、米国(2.4%)や欧州(1.8%)を大きく下回る。また、消費支出の減少や物価上昇も続く見込みである。

(4)リスク回避需要の減少

・世界全体の経済成長率は2024年に3.0%、2025年には2.8%以上を維持すると予想される。

・円の国際的な外貨準備の割合は2020年の6.1%から2024年には5.4%に低下している。

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2025年の円安は、金融政策の違い、経済成長の停滞、貿易収支の悪化、リスク回避需要の低下といった複数の要因が重なり、さらに進行する可能性が高い。円安は輸出企業に一定の支援を提供するものの、家計負担の増加や金融市場のリスク拡大といった負の側面を軽視することはできない。投資家にとって、日銀の政策動向、エネルギー価格の変動、世界経済の動向を注視することが重要である。

神月 陸見 Mathilda Shen

フィングループ株式会社の代表取締役社長。金融学と哲学の修士号を持っており、復旦大学証券研究所の講師、 Project Management Professional (PMP) 、上海華僑事業発展基金会のファンドマネージャー。
Email: mathilda.shen@finlogix.com