トランプ関税2.0、世界株式市場への影響懸念が強まる

トランプ・トレード:

金融市場の熱狂の裏に潜むリスク

11月初めの米大統領選勝利後、「トランプ・トレード」は金融市場の熱意を一気に高めた。S&P500指数は6000ポイントを突破し、ビットコイン価格も史上最高値を更新、10万ドルの大台が視野に入っている。同時に、米国国内産業保護政策の強化が予想される中、投資家は米製造業関連株に注目している。

トランプ政策は金融市場に貴重な投資機会を提供する一方で、グローバル貿易や将来の金融市場に潜むリスクをはらんでいる。2017年の「トランプ1.0」関税政策では、世界企業の利益率が低下したが、米国市場に依存する企業は一定の業績を保ち、株価が同業他社を上回る傾向が見られた。これは、関税の影響に適応した結果と考えられる。

しかし、今回の「トランプ2.0」関税政策はより大きな影響をもたらす可能性がある。その理由は、グローバル企業の米国市場依存度がさらに高まっていることにあり、特に医療健康産業でその傾向が顕著である。さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策行動も市場にとって重要な変数となるだろう。

 

米国市場依存度が高いほど

関税政策の影響は大きい

2017年と比較すると、グローバル企業の米国市場依存度はさらに上昇している。2023年のデータによると、米国外の大手企業200社(金融・公益事業除く)の平均収入の27.4%が米国市場からのもので、2017年の24.9%を上回った。

中でも、医療健康産業の米国依存は特に高く、収入割合は2017年の31.1%から2023年には38.8%に増加している。医薬品包装やワクチンは、米国からの輸入量が多い商品カテゴリの一つである。一例として、ノボノルディスクは収入の約55%を米国市場から得ており、非米国企業株式で2位の地位を占める。一方、不動産や材料産業の米国市場依存度は相対的に低いものの、2017年から増加傾向にある。

 

関税政策が世界株式市場の

利益率を圧迫

「アメリカ・ファースト」政策の下、関税政策が企業の利益率に与える影響は無視できない。2018年1月の輸入洗濯機と太陽光パネルへの関税導入後、世界株式市場の12カ月予想営業利益率は全体で70bp低下した。特に中国とインドの株式市場はそれぞれ128bp、120bpの大幅な低下を記録。一方で、欧州市場はほぼ影響を受けず、7bp上昇する結果となった。

 

米国市場依存企業の強い

パフォーマンス

パンデミック前、関税政策が企業の基本業績に一定の影響を与えたものの、米国市場依存度が高い企業は株価で優れたパフォーマンスを示した。2018年1月から2019年6月のピーク時、米国収入比率が高い非米国企業の株価は同業他社を平均760bp上回った。例えば、TSMCやノボノルディスク、SAPなどは12.8%の株価上昇を記録。一方で、BHPやシェル、ユニリーバなどの企業は5.1%にとどまった。

関税政策が短期的変動を

引き起こす可能性

関税政策が短期的な経済信頼感や株式市場の変動に影響を与えることは過去の経験が示唆している。2018年の関税政策強化で中国と欧州の株式市場が一時的な打撃を受けたが、その後急速に反発。背景には、世界各国の金融政策の支援があった。

現在、主要な中央銀行は緩和政策を採用しており、FRBの対応は重要な要素となる。2018年当時、FRBは引き締め政策を進める一方、中国と欧州の中央銀行は微調整にとどまった。このような政策の違いが各市場の回復速度に影響を与えた事例は、2025年以降の展望にも参考になるだろう。

張 益偉 Choko Zhang

上智大学卒業し、金融工学専攻。特許金融分析師(CFA)と金融リスクマネージャー(FRM)の資格を保有しています。卒業後、方正証券の半導体セクターアナリストとして2年間の経験を積み、現在はFingroupでストラテジストアナリストとして勤務しています。