中国茶文化と日本茶道

最初に茶の用途が発見されのは中国であり、儒釈道思想の影響を受けながら徐々に茶文化が形成されていった。中国と日本は古くから文化の往来が盛んにおこなわれ、茶文化は禅学の伝来とともに海を渡って日本に伝わり、次第に茶道文化の体系に発展し、物質的な影響のみならず、精神的にも大きな影響を与えた。中日茶文化は思想や精神面などでそれぞれ特色があり、いずれも伝承価値を有するものである。

 

一、中国茶文化

1.中国茶文化の歴史と思想

お茶とお茶の文化は中国が起源である。史料によると、神農時代にはお茶が登場し、西周期にはお茶を飲む習慣が広まったと記されている。両晋時代の飲茶は精神的な拠り所となり、茶葉に物質的意義以外の価値を見出すものとなった。唐代陸羽著成茶典『茶経』は茶の歴史、摘み方、飲み方などの内容を詳しく紹介し、後世に深い影響を与えた。飲茶の習慣の普及に伴い、茶文化も階級の違いに従って異なる形態となり、細分化され便利なものになっている。例えば宋代の龍鳳団茶と蒸青散茶、茶宴と闘茶の風習の区別がある。明代には、飲茶は繁雑さを省略し、簡素化され、紅茶製造技術が発明されるに至った。中国人は自然を尊び、お茶を飲む際、様々なものを「混ぜて飲む」こともある。例えば、塩、砂糖、オレンジの皮、桂円などを加え「清飲」することも、お湯だけでお茶を入れることもある。その中で、「清飲」には渇きを癒す「飲茶」、色の香りでじっくり味わう「品茶」、雰囲気の音楽を融合させる「茶芸」、そして哲理倫理道徳で身を修める「茶道」、つまり茶を飲んで悟りを深め、人生を味わうことが含まれている。

古人は茶は「陰陽」を調整できると考え、陸羽は『茶経』の中で「茶のために用いられ、味は寒まで、飲むために最も静行簡徳の人に適している」と記した。「精行倹徳」は陸羽が飲茶人の道徳修養に対する基本的な考え方であり、茶人の思想、品格、行為、信念などを測る基準であり、これによって簡単な茶を精神レベルまでに昇華させた。そのため、お茶を飲むことは生理的な渇きを解消するだけでなく、人々の精神が「体を修養するためにお茶を飲む」ことを追求している。

 

2.中国茶文化精神

お茶は人々の淡泊明志を体現し、人の心に穏やかな気持ちを与える。そのため、中国の茶文化は静かさを創り出し、人々を調和と安らぎの道を楽しむように導くことにある。人々はお茶を入れる時に甘酸っぱく苦く調和した中庸の美しさを感じることができて、接客時に礼儀正しい者は明倫の礼を感じて、飲茶で謙和の礼を感じ、品茶で環境及び気持ちの変化を感じ、心の静けさと距離を得る。茶文化は禅学と精通しており、両者は「茶禅一位」の関係にある。茶文化の精神は「和」を尊び、儒仏道の3つの思想「儒をもって世を治め、仏をもって心を治め、道をもって身を治める」を融合させた。「和」は中国茶文化の精神的支柱である。

中国の茶文化は儒道の「和、静、雅」の特徴を際立たせている。その中で、儒家は調和を核として、中庸の道を重んじている。茶事は儒家の中和と風韻を重視し、その茶の「和」は煮たり、茶を飲んだりする過程に現れている。『道徳経』の中で、万物はすべて陰陽相和に基づいており、「和」は道家哲学の重要な範疇であると指摘している。仏家は和やかな付き合いを提唱し、僧は座禅を組んで「心を一つの境地に注ぐ」。中国の茶文化は平和と淡雅を主張し、飲茶で閑静になり、釈儒道三家の「和」の内在を際立たせた。また、『大観茶論』によると、茶は閑潔さを薄め、韻が高く静まり返り、「静」で心境を際立たせることができる。道家は無欲ないので静かになり、静に入ることで悟りを高め、心の清明さを得る。仏学禅宗は座禅により雑念を排除し、和尚は座禅を組んでお茶を飲んで元気を回復し、「禅茶一味」を達成した。もちろん、茶道の雅は儒家の雅と相通し、「雅」は身を修めることができ、茗茶は上品な生命力を養うことができる。

 

二、日本茶文化

1.日本茶文化の歴史と思想

古代日本には原生茶の木は存在せず、飲茶の習慣もなく、茶文化は7、8世紀に中国大陸から伝わった。遣唐使の一人であった最澄、空海はお経を伝えるとともに、唐で盛んに行われていた茶文化に触れ、最澄は帰国後に天台宗を創設し、京都・比叡山の日吉神社に茶の実を蒔き、日本の無茶樹の歴史に終止符を打った。高僧が茶の導入と栽培を行い、天皇の提唱によって、次第に日本の宮廷、貴族の生活の一部に発展していった。彼らは「唐器」で茶会を開き、富貴と尊栄を表現した。その後戦国時代になると織田信長、豊臣秀吉に仕える茶道師として千利休が現れ、茶道の指導と茶会の儀式を指導し、豊臣秀吉の茶道による政治外交に大きな影響を与えた。また、千利休は豊城秀吉の権力をもとに珠光流茶道を広め、さらには大名を弟子にするに至る(利休七哲など)。日本の茶道は、上流社会に浸透し、、賓客を接待する礼儀作法として日本の文化の重要なものとして結実していく。実は、日本の茶文化は体の所作で茶を入れることにあり、芸術、社交、礼儀、修行など多くの要素を含んでいる。日本の伝統文化である茶道は、飲茶を基礎とする室内芸術であり、総合文化体系に属する。現在、日本の茶室、茶亭は各地に広がっており、茶道文化に関する映画、美術展はいろいろなところで見られる。

茶を味わうことは日本の宗教的性質を与え、それは芸術として、茶、本、花、茶器などの素材を融合し、自然の美意識を体現している。日本の美意識には世界各国が見せる美しさが含まれており、素朴な美しさが浸透している。素朴な美しさはさわやかさを与え、中国茶の伝来は日本の美学意識を変え、連論と能楽、和歌、茶はすべて中国陽の美から日本陰の美への転換を体現し、閑寂の感を与えた。そして日本の閑寂茶は確率し、次第に閑寂の美学意識を確立していった。これにより、後の日本茶文化思想の形成の基礎を築いた。

 

2.日本の茶道精神

明治維新後、日本の茶道は民衆間で普及し始め、日本の伝統文化の重要な部分になっていった。茶道は比較的厳格な手順と規則を守っており、人々は通常奥深い山林の中の茶室で茶を味わう。実際、茶室は一般的に書画を設置し、面積の大きさは「四畳半」を主とし、茶人は常に茶道儀式(点茶、煮茶、沖茶、献茶)を習得する必要がある。その後、日本社会の発展に伴い、茶道儀式は徐々に簡素化されてきたが、茶室の配置、お茶の回し飲み、生け花芸術にこだわり、お菓子を楽しむことも加え、楽しい雰囲気を付加していった。日本人は茶道を修養性、文化素養、社交の方法と見なし、人々はお茶で平和、友愛の茶道の存在を感じている。

また、千利休は日本の茶道精神の意味を要約すると「四規」(すなわち「和敬清寂」)と説いた。その中で、「和」は和気、和合である。日本の茶道は主人と客の調和のとれた関係を際立たせている。同時に、人と人の間には「敬」を心に留め、馴れ馴れしすぎて秩序が乱れなる状況を避けるべきであり、人と人、人と物には礼儀正しく節度があるべきであると考える。「清」は清潔のために、日本の茶器、茶室、人の心はすべて清潔で、お茶を飲んで心のけがれを払い、客人を世俗から抜け出すように導きます。「寂」は「悟」であり、茶道の根本的な精神的存在であり、その中の茶人、禅僧はすべて「物我両忘」の寂れた体悟であり、静けさと無我で悟る。

 

三、中日茶文化の本質、伝承発展の比較

中国の茶文化には貴族、雅士、禅宗などの茶道が含まれており、その中で貴族の茶道文化の背景は深く、茶と水の質、複雑な過程を重んじ、茶人の富貴な地位を際立たせることを目的としている;雅士茶道は大きな流派を発展させ、雅をもって環境、茶品を際立たせ、茶の境界と趣を重視した;、禅宗の茶道は僧によって発展し、清心寡欲を際立たせた。もちろん、中国の茶文化にも社会文化が含まれており、(茶屋、茶楼、茶室など)、土農工商は茶を友とし、茶の生活の本質、民衆性を体現している。初期の日本茶道は貴族書院式を主とし、中国茶席の側面と工芸名品、山水名画を結合した。このことから、日本の茶道は全国民の文化内容は備えておらず、一般的に茶道の旧家を主としている。その後、千利休は空寂の存在を茶道に入れ込み、草庵式空寂茶を形成し、「貧困」と世俗の対立を強調した。同時に木製構造、壁塗料(わら土)を通じて簡潔で静かな雰囲気を呈し、そして敷設面積を縮小して茶の香りと茶の熱気を集め、茶人が心の中で交流できるように促し、茶人の心の形と色を引き出し、茶の悠々とした趣を体得する。

「茶道」という言葉は中国に由来するが、中国の歴史上茶道観念は発達していない。滕軍の『中日茶文化交流史』には、「日本の茶道は形式に重きを置き、中国の茶道は品飲に重きを置く」、「中国の茶文化は実用層から精神文化方面に向かっているが、日本の茶文化は精神文化層から実用方面に向かっている」との意見である。まず、自然条件から言えば、『茶経』の「八の初め」は茶を生産する8つの道(43個郡、44個県)をリストアップして、中国の茶を生産する区の広大さを見ることができる。しかもお茶の加工技術には多くの方法があり、各地の銘茶だけでも千種類以上ある。日本の茶園の面積は小さく、茶葉は青緑茶を蒸すことを主としているため、日本の茶道は茶を飲む儀式に傾いている。次に、中国はまず庶民の茶文化があり、後に支配階級に受け入れられ、宮廷に広まった。歴代の帝王はお茶を飲むことを好み、庶民がお茶を飲むことに干渉しなかった。支配階級が主に関心を持っているのは、道徳教育の意義ではなく、茶葉の経済産出である。日本の支配階級は、お茶と権力の関係を強化した。織田信長、豊臣秀吉の前後に千利休を専任茶頭とした。戦功のあった将士には、土地ではなく貴重な茶器を与え、茶会を通じて茶道の社会的影響力を拡大し、茶道を通じて将士を慰め、茶の湯文化は政治に欠かせない存在となり、日本の茶道は精神的存在傾倒している。

 

:まとめ

中国の茶文化は自然と調和し、伝統文化の特色を際立たせている。それは儒道釈思想を備え、儒家含蓄、仏家静寂、道家広達などの精神理念をカバーし、「和」を精神核心とする。そのため、茶人は静かな環境で茶を飲むことを好み、自然の純美さ、人と自然の調和を感じている。

一方、日本の茶文化は僧から伝わり、禅学の思想の影響が大きい。日本の茶道はお茶を飲む儀式と精神修養を重視しているが、和敬と静寂は行動指針のように、主人が深い情実を明らかにし、客が誠実に交わり、主客が茶を飲んで生命の充実感を感じることを提唱している。中国でも日本でも、茶文化は身体的満足だけでなく、人の精神的豊かさをも満足することができる。

 

王仁旭(WANG RENXU  2006年~)、男、日本国東京生まれ、中国人民大学付属高校(International Curriculum Center of RDFZ)12年生、学生会幹部、知財研究クラブ創立者、日中高校生との交流を積極的に行い、学生の角度から、日中文化差異を研究している。