米国は世界経済において大きな影響力を持ち、大統領選挙の結果は国際金融市場や貿易、金融政策に直接響く。米国は世界の金融システムの中枢にあり、その政策は資本の流れや市場の信頼感にダイレクトに作用する。歴代大統領の経済政策はそれぞれ異なり、政策変更が国際経済秩序に与える影響もさまざまである。
1930年代の世界恐慌時、フランクリン・D・ルーズベルトはニューディール政策を導入し、財政刺激や社会保障政策を通じて米国経済の回復を図るとともに、ケインズ主義への関心を高めた。この政府の経済介入アプローチは、後の危機管理にも影響を与えた。
第二次世界大戦後、アイゼンハワーやケネディはマーシャル・プランを通じて国際協力と自由貿易を推進し、欧州と日本の経済再建を支援した。これにより米国の経済的リーダーシップが強化され、西側経済の基盤が築かれ、グローバル化が進展した。
1980年代には、レーガンが「サプライサイド経済学」に基づく減税や歳出抑制、金融引き締めを行い、資本を米国に呼び込んだ。レーガンの政策は経済成長と資本流入を促進したが、他国が自由化政策を模倣したことで、金融リスク管理の失敗と債務の増加を招いた。
1990年代、クリントンは北米自由貿易協定(NAFTA)に署名し、世界貿易機関(WTO)の設立を推進し、グローバル経済の一体化を加速させた。これにより米国の競争力は向上したが、製造業の海外移転や国内失業率の上昇などの課題も生じた。また、中国やメキシコなど新興市場のシェア拡大を促し、国際経済にも変化をもたらした。
2008年のリーマンショック後、オバマは量的緩和政策で経済の回復を図り、資本市場を立て直したが、新興市場への米ドル流入により資産バブルのリスクが生じ、新興国の金融政策が圧迫され、金融の不均衡が拡大する結果となった。
トランプ政権は「アメリカ・ファースト」を掲げ、貿易保護主義を強化した。特に中国やEUへの高関税で貿易赤字の縮小と国内雇用の増加を図ったが、国際貿易の不確実性が高まり、グローバルなサプライチェーンの混乱を招いた。各国が報復措置を取ったことで、世界経済の成長は鈍化した。
一方、バイデン政権は多国間主義を復活させ、グリーンエネルギーやインフラ投資に力を入れている。バイデンの気候政策は気候変動対策を進めると同時に、国際資本を新エネルギー産業へ誘導し、グリーン技術分野での競争を促している。
トランプが再び大統領に選出された場合、さらに積極的な貿易保護政策と減税が進むと予想される。すべての輸入品に10%の関税を課し、特に中国製品には最大60%の関税を検討しており、新たな貿易摩擦や米国のインフレ上昇を招く可能性がある。また、2017年の減税政策を延長・拡大する意向で、企業投資と短期的な経済成長を促進しつつ、財政赤字の拡大が懸念される。
トランプ再選のニュースで金融市場は激しく反応し、ドル指数は1.6%上昇して2年ぶりの高値に達した。ビットコインは7万5060ドル(約1150万円)に達し、10年物米国債の利回りも4.44%まで上昇した。エネルギー政策では、従来型エネルギー産業の規制を緩和し、石油・ガス採掘の拡大を推進する方針であり、従来型エネルギー企業には追い風となる一方、再生可能エネルギー産業には逆風となる可能性がある。
神月 陸見 Mathilda Shen
フィングループ株式会社の代表取締役社長。金融学と哲学の修士号を持っており、復旦大学証券研究所の講師、 Project Management Professional (PMP) 、上海華僑事業発展基金会のファンドマネージャー。
Email: mathilda.shen@finlogix.com
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