日中新時代(7)
日中首相、「戦略的互恵関係」推進で一致=石破首相、台湾問題「72年日中共同声明を堅持」 習近平主席と11月に会談へ

石破茂首相は10月中旬、ラオスで中国の李強首相と会談した。ビエンチャンでの東南アジア諸国連合(ASEAN)の関連首脳会議に合わせたもので、両首相は共通の利益を追求する「戦略的互恵関係」を推進することで一致した。会談の冒頭、石破首相は「両国間には協力の潜在性と課題・懸案があるが、両政府の努力を通じて関係発展の果実を得られるように共に取り組みたい」と強調。李氏は「(石破氏が)所信表明演説の中で、中国との戦略的互恵関係を引き続き推進し、あらゆるレベルで両国間の交流と意思疎通を促進すると述べたことを、中国は高く評価している」と語った。

石破首相は日本記者クラブでの7党首討論会で、中国の李強首相との会談について「対話を続けることで(両国が抱えるさまざまな)問題が解決に向かう糸口になった」と強調。「違いは違いとして明確に認識しつつ、協力していく分野に対して努力を続けたい」と語った。その上で、「両政府の努力を通じて両国国民が関係発展の果実を得られるようつなげていきたい」と述べ、習近平国家主席との会談にも「実現に努力したい」と意欲を示した。

石破首相、台湾問題で

「日中共同声明堅持」表明

石破首相は対話の重要性を強調。1972年の日中国交正常化に尽力した田中角栄元首相を「私の政治の師」と紹介し、「日中両国の指導者が明日のために話し合うことが重要だ」との当時の田中氏の発言を引用。台湾問題について「日中共同声明の立場を堅持する」と明言したことになる。11月中旬に南米・ペルーで開催されるAPEC=アジア太平洋経済協力会議、ブラジルで開催されるG20=主要20カ国・地域の首脳会議などで、中国の習近平国家主席との初会談が実現する見通しだ。

中国中央テレビ(CCTV)は「1971年10月25日の国連総会で通過した第2758号決議を重視すべきで、中華人民共和国はその決議により『中国を代表する唯一の国家』として認められたのだから、それを覆さない限り中華民国を国家として認めるのは国連決議に違反する」と論評した。

石破首相は7党首討論会で、約20年前の防衛庁長官時代に北京で中国の国防部長と会談した後、当時の温家宝首相に呼ばれ日中友好への熱い思いを共有したエピソードを披露。「国益に沿って主張すべきは主張し率直に対話する」ことの重要性を強調した。

 

「東京―北京フォーラム」

12月に東京で開催

日中の有識者らが課題を話し合う民間対話「東京―北京フォーラム」(共催=言論NPO・中国国際伝播集団)が『多国間協力に基づく世界秩序と平和の修復に向けた日中協力』をテーマに12月3~5日に東京で開催される。今年は20回目の節目となり、両国の政治家や政府・軍の関係者、大学教授ら100人超が参加予定。政治、経済、メディア、デジタル、安全保障など8分科会で議論し、最終日に共同声明を発表する。中国側から中国人民銀行の易剛・前総裁、元財務大臣の楼継偉・元財務相、崔天凱・元外務次官ら有力者約50人が出席予定。工藤泰志・言論NPO代表は「世界は分断を深め、複合的な危機の解決に向けて協力できないでいる。ルールに基づいた秩序づくりや、世界やアジアの平和と協力のために、日中が違いを乗り越えどのような責任を果たすことが出来るかを議論する」と同フォーラムの狙いを語っている。

<評者プロフィール>

1971年時事通信社入社。ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。Record China社長・主筆を経て現在同社相談役・主筆、人民日報海外版日本月刊顧問。日中経済文化促進会会長。東京都日中友好協会特任顧問。著著に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」など。