「3時間旅行圏」が新しい人気の旅行スタイルに

週末を有効活用

金曜日に仕事が終わると北京西駅に駆けつけ、高速鉄道に乗って2時間8分後に河北省邯鄲市に到着。夕食は現地の軽食レストランに行き、土曜日と日曜日は東太行景勝地と響堂山石窟を訪れ、一日は景色を、もう一日は文化を堪能。日曜日の夜にまた高速鉄道に乗って北京に戻り、翌日から新たな1週間をスタート――これは、北京市の90後(1990年代生まれ)の男性・王さんの慌ただしくも盛りだくさんの週末の過ごし方だ。ここ数年、主にマイカーや高速鉄道で中心都市の周辺に出かける「3時間旅行圏」スタイルが人気を集めている。

利便性と課題が共存

「3時間旅行圏」は、便利な交通ネットワークをよりどころに、週末の短い時間に気軽に周辺都市へ出かけ、「プチ旅行」を楽しむという新しい旅行スタイルだ。

「3時間旅行圏」がチャンスをもたらしていることは明らかだ。このスタイルは旅行の選択肢を広げ、旅行をより便利で多様なものへと変えた。地域の経済発展の促進にとってもプラスになっている。高速鉄道などの交通手段が整備されることで、都市間の移動時間が大幅に短縮された。第三次産業の重要な構成要素である観光産業の繁栄・発展は、ホテル、飲食サービス、娯楽など多くの産業の成長を牽引することになり、さらには地域の経済協力・交流を推進することにもなる。

しかし、このスタイルには一連の課題もある。まず、観光資源の同質化問題が徐々に顕在化しているという点だ。地理的な位置が近いことから、観光圏にある各景勝地が文化的、自然環境的に似通っており、観光しているうちに飽きてしまう可能性がある。独自の特色ある観光景勝地をどのようにして発掘し構築するかが、各地域の考えるべき課題となっている。また、一連の新興観光目的地はインフラと公共サービスの面での負担が重くなっている。たとえば交通渋滞、ホテル不足、環境の質低下などの問題はどこでも発生する可能性がある。そのため、各地域は観光産業の発展を推進すると同時に、インフラの建設と公共サービスの向上にも力を入れなければならない。

革新求められる観光産業

また、この旅行スタイルによって、観光産業は商品・サービス革新の面でさらなる対応が求められている。観光客は短い時間内により豊富で特色ある体験をしたいと思い、そのため観光産業は絶えず旅行商品・サービスを刷新して、観光客の多様化するニーズに対応しなければならない。これは観光産業の競争力を向上させるカギでもある。