9月27日に行われた自民党総裁選で、石破茂氏が第28代総裁に選出された。今回の総裁選は、過去最多となる9人が立候補。議員票368票、党員票368票の合計736票で争われ、決選投票では石破氏が215票、高市早苗氏が194票を獲得した。石破氏の逆転勝利の背景には、派閥の力が弱まり、議員それぞれの思惑が絡み合ったことがある。高市氏は1回目の投票で党員票を制し、麻生派などの支援もあって優位に立っていたが、保守派の支持をまとめ切れず、決選投票で浮動票が石破氏に流れた。また、中間層の支持を得られると判断されたことも、石破氏が支持を集めた要因だ。派閥を超えた支持の動きが、石破氏の勝利の鍵となった。
1957年、鳥取県生まれの石破茂氏は、早稲田大学卒業後、三井銀行で勤務。その後、1986年に自民党から初当選を果たした。石破氏は自民党内で保守本流に属しながらも、時には党主流派と距離を置き、独自の路線を歩んできた。防衛・安全保障分野に対する深い知識と関心を持ち、防衛庁長官や防衛大臣など要職を歴任して、日本の防衛政策に大きな影響を与えてきた。防衛力強化や集団的自衛権の行使、地域の安全保障体制の強化を一貫して主張してきた。また、石破氏は27日の記者会見で、物価高対策に積極的な姿勢を示し、電気・ガス、ガソリン価格の高騰対策を重点課題とする方針を表明した。景気優先の姿勢を見せつつ、財政健全化との両立が求められる状況で、内需の回復を強調した。
石破政権の課題は、安全保障と外交、そして経済の長期停滞からの脱却だ。少子高齢化や生産性の低迷、経済格差などの構造的問題に直面しており、特に中国、ロシア、北朝鮮からの軍事的脅威は、防衛・外交政策の重要なテーマとなる。中国外務省の林剣報道官は、日本に対し平和的発展と前向きな対中政策を求めたが、石破氏は防衛力強化、特に抑止力の向上とアジア地域での集団防衛構想に重点を置いている。楽天証券の愛宕伸康氏によれば、石破政権の外交政策が大きな課題となる一方、経済政策には大きな変化は見込まれないという。これらの国内外の課題に対し、石破政権には戦略的な対応が求められている。
石破首相の追加利上げに慎重な姿勢が、円安と日本株の上昇を後押ししている。10月2日、石破氏は日銀の植田和男総裁との会談後、現状で利上げの必要はないと発言し、これまで金融緩和に懐疑的とされていた石破氏の「ハト派」的な姿勢が注目された。この発言を受け、円相場は急落し、一時147円/ドルを記録。円安は輸出関連企業にプラスとなり、3日の日経平均株価は1,047円の大幅上昇となった。特に半導体関連銘柄が買われ、東京エレクトロンなどが大幅高となった。しかし、石破氏の発言は解散総選挙を見据えた市場対策と見る向きもあり、楽観視する声は限られている。円相場は今後の日銀の利上げ見通し次第でさらに円安が進む可能性があり、米国の経済指標や労働市場に注目が集まっている。円と日本株の先行きは依然として不透明な状況だ。
張 益偉 Choko Zhang
上智大学卒業し、金融工学専攻。特許金融分析師(CFA)と金融リスクマネージャー(FRM)の資格を保有しています。卒業後、方正証券の半導体セクターアナリストとして2年間の経験を積み、現在はFinlogixでストラテジストアナリストとして勤務しています。
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