翁道逵 ベリーベスト法律事務所(中国弁護士)
日本の暗号資産に関する法制度ガイド その78

一般社団法人日本暗号資産取引業協会(以下「認定協会」という)は、金融商品取引法関連自主規制規則として、業務取扱関係、顧客財産管理・システム安全管理等、勧誘・広告、AML/CFT・反社会的勢力対応、事故確認申請、苦情・紛争解決、金融商品仲介業者、従業員服務、外務員登録、処分関係規則などを規定しております。

今回は認定協会の業務取扱関係の「暗号資産関連デリバティブ取引業に係る顧客の管理及び説明に関する規則・ガイドライン」(以下「顧客管理説明規則」という)を紹介します。

  • 取引開始基準

「顧客管理説明規則」第2条によると、会員は、顧客との間で暗号資産関連デリバティブ取引を開始するための基準を定め、当該基準に照らして顧客との取引の開始の可否を判断しなければなりません。また、ここに定める取引開始基準は、顧客の投資経験、顧客からの預り資産その他会員において必要と認める事項について定めなければなりません。

さらに、上記にかかわらず、会員は、特段の事情がない限り、未成年者を対象として暗号資産関連デリバティブ取引を行ってはならず、会員は、取引を判断する能力に欠けると認められる顧客との間で、暗号資産関連デリバティブ取引を行ってはなりません。ただし、成年後見人など当該顧客の行為を代理する者の指示等に従い取引を行う場合を除きます。

ちなみに、会員は、高齢者との間で暗号資産関連デリバティブ取引を行う場合には、当該高齢者の取引に対する理解及び知識、判断力その他取引を適切に行うために確認を要する事項を確認の上、高齢者の能力に応じた取引を提供しなければなりません。

 

  • リスク等の説明

「顧客管理説明規則」第21条によると、会員は、顧客との間で暗号資産関連デリバティブ取引を開始するにあたっては、以下に掲げる事項を、あらかじめ顧客に説明する必要があります。

(1) 当該取引に関し、その対象となる暗号資産又は対象暗号資産指標(「暗号資産関連デリバティブ取引に関する規則」第 2 条第 1 項第 1 号に定義されるものをいう。)等を含む基本的な仕組み

(2) 当該取引が原則として中途解約できないものである場合にはその旨

(3) 当該取引を中途解約する場合であって解約清算金が発生する場合には、その旨及び解約清算額(試算額)の内容並びに実際に当該取引を中途解約する場合における試算した解約清算金を超える可能性がある場合にはその旨

(4) 投資額を上回る損失が生じるおそれがある場合にはその旨、及び、当該損失を生じさせる主な要因とその理由

上記の他に、「顧客管理説明規則」において、口座開設手続き、書面の交付、説明事項、業務管理などのさまざまな詳細規定が定められています。

次回へ続く