自民党総裁選が投開票され、石破茂元幹事長が決選投票の結果、新総裁に選出され10月1日の臨時国会で首相に指名された。
自民党派閥の裏金事件による深刻な政治不信の中、関係議員の選挙での非公認に言及。決選投票後の演説で「共に助け合い、悲しい思い、苦しい思いでいる人を助け合う日本にしていきたい」と強調。格差拡大是正や財政規律に前向きの姿勢を示した。
総裁選決戦投票で争った高市早苗氏は「首相になっても靖国神社参拝をする」と公言するなど保守的な傾向が強く、中国や韓国など東アジア諸国との軋轢が懸念されていた。石破氏は歴史認識や近隣外交問題に穏健な考え方を保持している点も支持された一因だ。
自民党総裁選の結果を受け、中国と韓国からは日本との関係改善や協力拡大を期待する声が上がった。中国外務省は自民党総裁選結果について「中日関係の持続的で安定的な発展を望む」と表明。林剣副報道局長は「中日関係の発展は両国民の基本的な利益であり、唯一の正しい選択肢だ」「日本側は客観的で正しい対中認識をもち、前向きで理性的な対中政策をとるべきだ」と訴え、日中が共通の利益を追求する「戦略的互恵関係」の推進を呼びかけた。
石破氏も「中国とはトップ同士の話し合いが重要」と指摘。早期に習近平国家主席との首脳会談を行う方針だ。
こうした中、外務省と日中友好会館は2016年度より実施している「日中植林・植樹国際連帯事業」の一環として、2024年度清華大学学生代表団(団長:史宗愷 清華大学校務委員会 副主任一行100人)を9月23日から29日まで日本に招聘。24日に都内で歓迎会を開いた。
同代表団は中国の清華大学に所属する大学生・大学院生で構成され、日本滞在中、植樹活動、環境・防災に関するセミナー、関連施設の視察などを行った。環境・防災意識の啓発を図るほか、日本の大学生や市民との親睦を深めるとともに、日本の経済、科学技術、社会、歴史、文化などが体験できるような施設や大阪市、和歌山市を訪問した。
歓迎会では主催者を代表して日中友好会館の黄星原・中国代表理事が「6回目となるこの事業は日中友好の未来を開くもの。中国を背負う清華大学の皆さんと親睦を深めるのは有意義で、日本への理解を深めていただきたい」と歓迎のあいさつ。団員を代表して史宗愷・清華大学校務委員会副主任が「植樹事業を通じてグローバル人材を育て、中日友好の発展に貢献したい」と答礼した。
来賓の竹谷とし子参議院議員(公明党参院国会対策委員長)は、「世界トップクラスの清華大学を迎えて実施する植樹事業は気候変動や環境保持に対応するので災害対策にもなる。私は清華大学と連携している創価大学の出身なので、日中友好に向け交流が進むのは喜ばしい」と歓迎した。
外務省の石飛節アジア大洋州局中国・モンゴル第二課長は、「日中両国は引っ越しのできない隣国であり、感情に流されずに相互理解を深めたい。キーワードは感動を共有すること。日中の若い世代に期待したい」と述べ、乾杯の音頭を取った。
この後、団員と駐日中国大使館や日中友好会館幹部などとの懇親の輪が広がった。
日中間の諸問題を解決し「平和友好の輪」を広げるためにも、日中の若い世代の交流は極めて重要である。
<評者プロフィール>
1971年時事通信社入社。ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。Record China社長・主筆を経て現在同社相談役・主筆、人民日報海外版日本月刊顧問。日中経済文化促進会会長。東京都日中友好協会特任顧問。著著に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」など。
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