9月の米国株市場の最初の取引日に、主要3指数は軒並み下落し、エヌビディア(NVIDIA)は9.5%の大幅下落を記録、市場価値は2790億ドル(約43兆8591億円)減少した。これにより半導体株全体も大きく下げた。先週の決算発表以来、エヌビディアの累計下落率は15%に達している。主要な要因は以下の三点である。
米国の8月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は47.2に低下し、5カ月連続で景気の分かれ目とされる50を下回り、米国経済の減速が懸念されている。一方、日本銀行の植田和男総裁は利上げ継続の可能性を示唆する「タカ派」の姿勢を示した。8月に日銀が利上げに積極的な「タカ派」に転じたことに加え、米国の経済指標も低調であったことから、世界市場に不安が広がり、当時の米国株主要3指数は3日間で5%以上の下落を記録した。こうしたマクロリスクの高まりの中、特に高い評価を受けているテクノロジー株であるエヌビディアの下落が目立っている。
米国司法省は、エヌビディアが計算サービス市場での独占を疑われていることから調査を強化している。6月にはすでにエヌビディア、マイクロソフト、OpenAIが独占禁止法(反トラスト法)の調査対象となっていた。また、米国の大統領選が近づく中、反トラスト問題が選挙戦の焦点となっており、バイデン政権はこの問題に対して強硬な姿勢を示している。さらに、カマラ・ハリス副大統領もこの政策を継承する可能性が高い。このため、エヌビディアの政策リスクに対する市場への懸念が強まっている。
エヌビディアのGB200チップとRTX 50シリーズのグラフィックスカードは生産の「歩留まり」(ふどまり:全体に対する成果の割合)の問題から出荷が遅れる可能性があり、最新のBlackwellチップも製造が複雑なため困難に直面している。台湾の半導体メーカー、TSMCも生産能力や歩留まりの問題を抱えており、出荷の遅延を招いている。半導体業界では製品の遅延は珍しくなく、インテルはかつて10nmプロセスで同様の問題に直面し、最終的には3年遅れで製品を発表したことがある。エヌビディアの場合、市場の新製品への期待が高いため、いかなる遅延も株価に大きな影響を与える可能性がある。
また、AI投資のリターンについての懸念も広がっている。クラウドコンピューティング企業は投資を増やしているが、投資家たちはテクノロジー大手がエヌビディアのチップに巨額の投資をしても、期待通りのリターンを得られるかを疑問視している。AIブームの最大の勝者であるエヌビディアは現在、マクロ経済の不安定さ、政策リスク、そして業界内の生産課題という三重の圧力にさらされている。
神月 陸見 Mathilda Shen
フィンロジックス株式会社の代表取締役社長。金融学と哲学の修士号を持っており、復旦大学証券研究所の講師、 Project Management Professional (PMP) 、上海華僑事業発展基金会のファンドマネージャー。
Email: mathilda.shen@finlogix.com
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