中国の中長期的な政策を審議する中央委員会第3回全体会議(三中全会)が7月中旬に開催された。「改革の全面的深化」と「中国式現代化を推進」を決定。改革案を中華人民共和国建国80年となる2029年までに完成させる。
コミュニケでは、2035年までに「高水準の社会主義市場経済体制」を建設するとの目標を設定。AI(人工知能)、電気自動車(EV)、省エネ技術など最先端技術・産業の振興を強化し、イノベーション(技術革新)を通じて成長の底上げを目指す。米国が半導体などハイテク分野で対中抑止策を進める中、「供給網(サプライチェーン)の安全」を確保すると強調した。
国内需要を拡大する方針も打ち出した。「民生を改善することが中国式現代化の重大任務」とし、収入分配制度や就職対策、社会保障制度、人口対策を改善する方針も示した。不動産や地方政府債務問題を今後の経済リスクとして明示し対策を講じる。
対外開放が基本的な国策であることを確認した上で、貿易経済などで「改革をより突出した位置に置き、さらに深化させなければならない」と主張。金融や財政、国防などの改革も進めると表明した。
こうした中、米国と欧州の対話も進む。ブリンケン国務長官、イエレン財務長官など米閣僚が訪中しているほか、4月には独ショルツ首相が企業幹部の経済交流ミッションを率いて中国を訪れた。5月にはフランスが習国家主席をパリで国賓として出迎えた。関係が悪化していたオーストラリアでも6月に中国から関係改善に向けパンダが送られることが決まった。ニュージーランド、イタリアなど各国で外交や経済面で対中関係を強化している。
日米欧をはじめ外国企業の多くは業績拡大に向け、巨大市場・中国を無視できない。米有力企業の訪中も相次ぐ。金融大手ゴールドマン・サックスや半導体大手クアルコム、スポーツ用品大手ナイキ、飲食大手スターバックスなどの有力企業が訪中。中国進出企業で構成する米中ビジネス協議会(USCBC)が組織し、中国要人と面談した。
在中国の日本企業幹部は「中国を重要な市場の一つとする企業が5割を超え、中国市場の重要性は高まっている」と強調。半導体やエネルギー安全保障などで必要以上の規制や排除は避けるべきだとしている。国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)における米中の協力は引き続き合意事項である。
日本にとって中国は貿易総額の2割以上を占める最大の貿易投資相手国。グローバル化の恩恵を享受する日本は多国間主義を貫くべきだ。中国と独自のパイプを持つ日本のポジションを取り戻し実利をとれるよう官民が努力すべきである。
こうした中、7月下旬に上川陽子外相と中国の王毅共産党政治局員兼外相とラオスのビエンチャンで会談し「重層的に粘り強く意思疎通を積み重ねていく」ことで一致。共通の利益を追求する「戦略的互恵関係」の推進に向けた対話を歓迎、経済界や日中議員連盟関係者の訪中が相次ぎ、既に官民の人的交流が活発化している。
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