越境ECが双循環を推し進める

ロイター通信の最近の報道によると、中国商務部等9部門は近日中に、越境ECによる輸出拡大と海外倉庫建設の推進に関する意見を発表する見通しだ。中国は国際間のデータ管理を改善し、越境ECの輸出監督を適正化し、越境EC関連業者の「グローバル化」をサポートする。ロイター通信は、越境ECは中国の対外貿易の大きな力になっていると指摘する。近年、SHEIN、拼多多のTemu、アリババのAliExpressなどが、中国製製品を海外市場に展開し急速に成長している。これにより、国内消費に傾注していた企業に新たな成長の道が開かれる。

越境EC産業発展の3つの特徴

現在、中国の越境EC産業の発展には次の3つの特徴が見られる。

まず、成長スピードの速さである。統計によると、過去5年間で、中国の越境ECの産業規模は10倍以上になっている。2024年第一四半期の越境ECの取引額は9.6%増の5776億元(約12.2兆円)で、そのうち輸出は14%増の4480億元(約9.5兆円)であった。国際貿易の不確実性が高まり、従来のオフライン貿易への圧力が増大し続ける状況下、規模が大きく、活動性、革新能力、柔軟性の高い越境ECは、貿易環境の新たな変化に適応し、それぞれの貿易業者のニーズを満たすことができる。越境ECに牽引され、海外倉庫などの新しい貿易インフラの構築も進んでいる。

二点目に、モデルシフトとアップグレードの加速である。近年、広告、税金、物流、コンプライアンス業務のコストが上昇し、アップグレードやモデルチェンジは必須であり、トレンドである。越境EC企業は、単に「出店し、商品を販売し、利益を得る」だけでなく、輸出先国の市場のニーズを察知して商品やサービスを最適化し、輸出先国の消費者ニーズを満たし、市場競争力を高める必要がある。さらには、リスクを軽減するために市場の多様化を進める必要がある。欧米市場に加えて新興国市場も考えられる。今後は、規範化、インテリジェント化、グリーン化も求められる。

三点目に、「越境EC+産業ベルト」が対外貿易の最前線となっている。現在、一部の越境EC企業は、経験不足、人材不足を補うためにモデルチェンジを図り、海外市場を開拓し、ビジネスチャンスを拡大するために「フルマネージド」モデルを立ち上げている。これによって、越境EC産業参入へのハードルが下がり、越境ECプラットフォームと伝統的な産業ベルトの統合が促進され、関連企業・事業者は海外市場を開拓し、多様化する市場ニーズに適応することができる。さらには、「メイド・イン・チャイナ」のアップグレードとブランディングにも寄与する。

 

越境EC輸出拡大に関する意見を発表

このほど、商務部をはじめとする9部門は、越境EC輸出拡大・海外倉庫建設に関する意見を発表した。

越境EC事業者の育成、財政支援の強化、関連インフラと物流システムの構築の強化、監督とサービスの最適化、ルール作りと国際協力の5つの側面から具体的措置を提唱している。政策は包括的で方向性が明確であり、越境EC輸出及び海外倉庫建設における政策のポイントが網羅されている。

例えば、「越境ECを活性化するための産業ベルト」モデル開発のためのベンチマークの育成は、デジタル経済と実体経済の融合の促進に寄与する。技術面などの条件をクリアした事業者は、規定に従い、ハイテク企業或いは技術先進型サービス企業に申請することができ、関連企業は税制上の優遇措置などの恩恵を受けることができる。

越境EC輸出小口貨物の「出荷前検査」モデルの推進は、越境EC業者の物流効率の向上につながる。全体として、これらの政策は越境EC業者が現在直面している実際の課題や問題点を解決し、実質的利益をもたらし、業界全体の自信を高める。

現在、中国は国内循環を主体とし、国内と国際の2つの循環が相互に促進する新たな発展戦略の構築を加速させている。

 

双循環戦略を進めブランド力を高める

越境EC は新たな貿易業態、新たなモデルとして、海外倉庫などの貿易インフラと連携することで、一方では、世界の優良商品を中国市場に呼び込んで国内消費をアップグレードし、グローバル企業に恩恵をもたらし、一方では、より多くの「メイド・イン・チャイナ」をグローバル展開することで、海外の消費者は高品質の中国製品を享受できるようになり、中国製品の国際的影響力を高めることができる。これは、双循環戦略を円滑に進める上で大きな意義を有する。

将来的には、一連の政策によって、越境EC業界は大規模言語モデルや人工知能などの新技術との融合を加速し、アプリケーションシナリオとサービスモデルの革新を続け、国際貿易のデジタルトランスフォーメーションを推し進めるであろう。越境ECと「メイド・イン・チャイナ」の相加効果によって、「メイド・イン・チャイナ」のブランド力は一層高まるであろう。