激動の21世紀、世界経済は大海のごとく波乱万丈であり、国と国とは相互に依存し合い、共に周期性の変化に直面している。世界第3位の経済大国であった日本の運命は、とりわけ注目を集めている。日本の現代史において、安倍晋三元首相とその経済政策「アベノミクス」は、日本経済に復活の希望をもたらした。
アベノミクスの第一の矢は、大胆な金融政策であった。この政策の実行は、日本銀行の大規模な量的緩和(QE)政策に大きく依存していた。中央銀行である日銀が国債やその他の資産を購入することで、大量の資金を市場に注入し、インフレ率を引き上げ、長引くデフレを終わらせようとした。
この措置は一定の成功を収めた。データによれば、日本のインフレ率は2013年に入ってから上昇し、中央銀行が設定した目標の2%には届かなかったものの、明らかにデフレの影から抜け出した。 同時に、急激な円安が輸出企業にとっては強力な支援となり、円は対ドルで2012年の約85円から2013年には約105円まで円安が進み、日本の製造業の競争力を大幅に高め、輸出を増加させた。
第二の矢は、政府の支出を通じて経済成長を刺激することを目的とした柔軟な財政政策である。安倍政権発足当初、日本政府はインフラ整備や公共事業を含む一連の景気刺激策を打ち出した。これらの措置は短期的に経済成長を促進し、例えば2013年と2014年の日本のGDP成長率はそれぞれ1.4%と0.3%に達した。
しかし、財政出動への依存は莫大な財政圧力をももたらした。日本の公的債務残高はすでに世界最高水準にあり、債務残高の対GDP比は200%を超えている。財政出動は短期的には経済を刺激できるものの、長期的には財政支出と債務水準のバランスをとることが大きな課題となった。
第三の矢は、経済・社会構造の変革によって日本の長期的な成長ポテンシャルを高めることを目指す、最も複雑で困難な構造改革である。安倍政権は、労働市場規制の緩和、働く女性の増加、移民政策の改革推進、科学技術・イノベーションの育成と企業改革など、一連の改革を打ち出した。
これらの改革は一定の成果を上げた。例えば、女性の労働市場への参入は安倍政権下で大幅に上昇し、2012年の63.6%から2018年には70.0%となり、経済に新たな活力を注入した。しかし、構造改革には根深い制度的・文化的変革が伴うため、往々にして効果が現れるまでに時間がかかる。その一方で、既得権益を持つ集団の抵抗に直面し、多くの改革措置は遅々として進まず、期待された成果を達成できていない。
安倍晋三元首相が遺したアベノミクスは日本に影響を与え続けている。それは最近の日経平均株価の度重なる高値更新にも現れている。安倍政権後の日本政府は、アベノミクスを土台とし、根深い経済・社会の問題に対処するための改革をさらに進める必要がある。このグローバルな周期的変化の潮流の中で、日本はアベノミクスによる経済回復へ独自の道を探ってきた。この過程において、日本は経済の復興だけでなく、社会の進歩と国民の幸福も追求し続けている。
神月 陸見 Mathilda Shen
フィンロジックス株式会社の代表取締役社長。金融学と哲学の修士号を持っており、復旦大学証券研究所の講師、 Project Management Professional (PMP) 、上海華僑事業発展基金会のファンドマネージャー。
Email: mathilda.shen@finlogix.com
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