日中新時代(3)
月裏側の土壌サンプルの持ち帰りに成功=大連・夏季ダボス会議に日米欧から千六百人出席
—アジア最大のモバイル見本市「MWC上海」に日系企業多数参加

中国の無人月面探査機「嫦娥6号」が6月25日、月裏側の土壌サンプルの持ち帰りに世界で初めて成功、内モンゴル自治区の四子王旗着陸場に帰還した。中国は2030年までに有人着陸を実現する計画。

月の裏側は地球からの電波が届かず、探査機とは直接交信ができない。このため、土壌サンプルを地球に持ち帰る「サンプルリターン」は難度が高い。月の裏側には巨大な隕石が衝突した跡があり、約40億年前の土壌サンプルの採取は貴重と期待されている。

月には水や金属といった資源が存在する可能性がある。人類が宇宙で活動する新たな拠点となるほか、火星など遠方に行く足がかりとなる。

中国は今回の成功をテコに、月面開発を進める。2026年前後には嫦娥7号を、2028年前後には嫦娥8号をそれぞれ打ち上げる計画。将来の月面基地の候補地である南極域で水を含む環境探査を進める。月面基地の基礎となる研究ステーションを建設し、2030年までに月面に宇宙飛行士を送り込む計画だ。

習近平国家主席は「宇宙強国と科学技術強国の建設における象徴的な成果だ」と指摘。「宇宙強国の目標に向けて勇ましく強い意志を持って前進し、民族復興の偉業に新たに貢献することを希望する」などと強調した。

李強首相、「開放型世界経済建設へ規制緩和推進」

第15回夏季ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)が6月下旬、遼寧省大連市で開催された。会議には日米欧を含む約80か国・地域から政界、商工業界、学術界、メディア業界の代表ら1600人以上が出席。ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領、ベトナムのファム・ミン・チン首相ら各国首脳も出席した。

李強・中国首相は6月25日に演説し、外資企業に対し「中国は開かれた大市場である」と指摘、一層の対中投資を呼びかけた。企業の市場参入と公正な競争に関わる制限の撤廃に尽力していると力説。開放型世界経済の建設に向け、諸規制の緩和などを推進する方針を明らかにした。

この会議では「10大新興技術報告書」が発表され、反響を呼んだ。今後3年から5年以内に世界に大きな影響を及ぼす10の画期的技術が列挙された。科学発見を駆動する人工知能(AI)、プライバシー強化技術、スマートメタサーフェス、高空プラットフォーム通信システム、通信感知一体化、世界の没入技術の完成、弾性サーマル素材、炭素を捕獲する微生物、代替タンパク質飼料、器官移植改善を目指すゲノム研究――などの技術が明示された。

中国・上海でアジア最大級のモバイル関連見本市「MWC上海」が6月下旬に上海新国際博覧センターで開催された。日米欧をはじめ世界の先端IT企業などが参加し、高速通信技術などが披露された。日本からも多くの関連企業が出品。通信機器メーカーの代表者は「このような大規模な見本市への参加は今後の事業展開にとても有用だ」と指摘している。

<評者プロフィール>

1971年時事通信社入社。ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。Record China社長・主筆を経て現在同社相談役・主筆、人民日報海外版日本月刊顧問。日中経済文化促進会会長。東京都日中友好協会特任顧問。著著に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」など。