米国におけるグラフィックスカード企業の歴史は、1980年代末から1990年代初めまで遡ることができる。1981年にIBMが最初のパーソナル・コンピュータを発表し、パーソナル・コンピューティングの時代が幕を開けた。1985年には、シリコンバレーのいくつかの小さな企業がGPU(Graphics Processing Unit、3Dグラフィックスなど画像描写に必要な計算処理を行う半導体チップ)の開発に着手した。その中でも、エヌビディア、ATI(後にAMDが買収)、3dfxが最も有名である。
エヌビディアは1993年に設立され、1999年に「世界初のGPU」と呼ばれるGeForce 256をリリースし、現代のグラフィックスカード技術の基盤を築いた。
21世紀に入っても、エヌビディアはグラフィックスカード技術の進歩をリードし続けている。2006年には、GPUを利用して汎用の並列計算を行うためのソフトウェア開発・実行環境CUDA(Compute Unified Device Architecture)を発表し、グラフィック処理の効率化だけでなく、科学コンピューティングや人工知能などの分野にもGPUを応用できるようになった。
エヌビディアとAMD(旧ATI)の競争はグラフィックスカード市場において激しく、両社は2000年以降、次世代製品を発表し続けている。
近年、エヌビディアは特にAIおよびデータセンター市場への進出が顕著になっている。TensorコアGPUとAmpereアーキテクチャーの発売は、エヌビディアの市場シェアを拡大し、多額の利益をもたらした。
2024年上半期の決算報告によると、エヌビディアの総売上は2024年第2四半期に135億ドル(約2兆1041億円)に達し、前年同期比101%増。このうち、データセンター事業の売上高は103億ドル(約1兆6079億円)で、前年同期比171%増、ゲーミンググラフィックスカード事業の売上高は、前年同期比22%増の23億ドル(約3590億円)であった。
下半期の見通し
エヌビディアのデータセンター市場における立場は、AIアプリケーションの普及と大規模データ処理の需要の増加により、より強固になっている。特に、H100やA100などのハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)GPUの需要は増加しており、自動運転、自然言語処理、コンピュータビジョンなど、AI分野のブレイクスルーと新しいアプリケーションの出現が続いている。
ゲーミンググラフィックスカード市場の成長率は鈍化しているが、新しいゲームのリリースと高性能グラフィックスカードへの継続的な需要により、市場は安定している。新しいGeForce RTX 40シリーズグラフィックスカードの発売が市場の需要を刺激することが期待される。
自動運転やメタバースなどの新興市場におけるエヌビディアの位置付けが注目されている。これらの分野では高性能のコンピューティングパワーが必要であり、エヌビディアの技術的優位性は、新市場での有利な地位を確立することにつながる。量子コンピューティングやエッジコンピューティングなどの最先端技術の研究開発が将来の成長を牽引することが期待されている。
エヌビディアは技術的に先行しているが、市場における競争は依然として激しい。AMDやインテルなどの競合他社が市場シェアを獲得するために新製品を投入している。グローバルサプライチェーンにおける不確実性や半導体不足などの課題は、エヌビディアの生産と販売に影響を及ぼす可能性があるが、エヌビディアは多角化したサプライチェーン戦略と在庫管理により、これらのリスクを軽減させることが期待される。
神月 陸見 Mathilda Shen
フィンロジックス株式会社の代表取締役社長。金融学と哲学の修士号を持っており、復旦大学証券研究所の講師、 Project Management Professional (PMP) 、上海華僑事業発展基金会のファンドマネージャー。
Email: mathilda.shen@finlogix.com
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