日中新時代(2)
日中韓首脳会議、FTA交渉再開で合意=日中は建設的な関係構築目指す―「北朝鮮」でも協力確認

(岸田文雄首相、中国の李強首相、韓国の尹錫悦大統領)は5月27日、ソウルで4年半ぶりとなる会談を開催した。中断している自由貿易協定(FTA)の交渉再開で合意したほか、人的交流や相互投資を拡充し、「未来志向」の協力関係を築くことを確認。台湾や北朝鮮を含む東アジアの安全保障問題についても協議した。

尹大統領は共同記者発表で「北朝鮮が国際社会の警告にもかかわらず発射を強行する場合、断固として対応すべきだ」と訴えた。岸田首相も衛星発射の中止を強く要求。「北朝鮮の非核化と朝鮮半島の安定が3カ国共通利益である点を改めて確認した」と説明した。日本人拉致問題の即時解決に向けて中韓の支持を求め、理解を得たと強調した。

李首相「共に東北アジアの

安全と安定協力を」

李首相は「朝鮮半島の平和と安定を守るためのプロセスを推進し、行き違いを善処して『核心的利益』に配慮し、共に東北アジアの安全と安定を保ちたい」と呼応した。

日韓両国にとって中国は貿易総額の約2割を占める最大の貿易相手国。中国からみても日本は2位、韓国も3位と重要だ。中国は米国が最大の貿易相手で、日本は2位が米国、3位がオーストラリアと続く。韓国も2位が米国で、3位ベトナム、4位日本の順。3カ国は相互依存が強く経済協力が不可欠であり、今回の日中韓サミットでも連帯を申し合わせた。

日中韓は、22年に発効し東アジアに世界経済の3割を占める包括的経済連携(RCEP)に加わっており、日中韓3カ国によるFTAの早期妥結は東アジア地域の一層の発展と安定につながると期待されている。

共同宣言には(1)来年から2年間を日中韓の文化交流年し人的交流を促進する(2)少子高齢化対策など共通の課題に連携して取り組む――などが盛り込まれた。

 

日中、戦略的互恵関係推進

ハイレベル対話で一致

この日中韓首脳会議に先立つ26日、岸田文雄首相はソウルで中国の李強首相と個別に会談。経済や人的・文化交流に関する対話を通じ、協力や交流の拡大に取り組む方針を強調。日本産牛肉の輸入再開、精米の輸出拡大に向けた調整を図る考えも伝えた。

岸田首相は会談後、記者団に「戦略的互恵関係の包括的な推進と、建設的かつ安定的な関係の構築という大きな方向性に沿い、さまざまな課題や懸案について進展を図ることを確認し有意義な会談となった」と述べた。

中国の習近平政権は日本との対話を重視しつつある。は29日、中国共産党中央対外連絡部(中連部)の劉建超部長が5月末に来日、岸田首相と会談。日中が安定した協力関係を築く重要性を確認した。閣僚や与党幹部らも劉氏と会見。日中両国は対話を重ねて懸案の打開につなげる構えだ。

笹川平和財団は5月16日、中国軍中堅幹部の歓迎行事を東京都内で開催。防衛省から約20人が出席。中国軍訪問団(佐官級ら約20人)を率いる張保群少将は「両国関係発展のために土台を築く」と挨拶、関係改善に期待を示した。

隣り合う日中韓3カ国トップらの交流と意思疎通は、東アジアと世界の平和と経済発展に大きく寄与することになろう。